【7月10日 AFP】ニューヨーク(New York)市の愛煙家たちは今月始まったたばこ税の増税に困り顔だったが、今週に入ってさらなるタバコ規制方針が明らかになり、どこでたばこに火をつければいいのかとますます困惑している。

 ニューヨークでは今月からの増税でたばこ1箱が11~15ドル(約970~1300円)、1本あたり約75セント(約66円)と全米で最も高い値段になっている。

 そして今週、元愛煙家で現在は嫌煙家のマイケル・ブルームバーグ(Michael Bloomberg)市長が、公園や砂浜での喫煙を禁止する同市の衛生局長の提案を支持する考えを表明した。

 ニューヨーク市ではすでにバーやレストラン、オフィスの建物内、その他公共施設の建物内での喫煙が禁止されており、今回の表明に、喫煙者たちは怒りをあらわにしている。

 映画制作者だという男性は、セントラルパーク(Central Park)でポールモール(Pall Mall、たばこの銘柄)を取り出しながら「われわれは全方位から攻撃を受けているよ」と語った。「公園の空気を規制しようなんて、ファシスト国家の一歩前だ」

■税収増と市民の健康増進

 市や州当局は、たばこ税の増税で4億4000万ドル(約390億円)の税収増を見込んでおり、財政が潤うと同時に、多くの人が喫煙を止めることで長期的には医療費も削減できると期待を寄せている。たばこ1箱あたりの市税は1.5ドル(約130円)。州税は、今月からの増税で1箱あたり1.6ドル(約140円)増えて4.35ドル(約385円)になった。

 公園や砂浜での喫煙の禁止は、もともと同市のトーマス・ファーリー(Thomas Farley)衛生局長が提案していた。ファーリー局長によれば、市内のタバコによる死者数は、エイズと違法薬物、自殺、殺人による死者を合算した死者数よりも多く、年間7500人に上っている。

 ブルームバーグ市長は健康問題に関心が強く、市内のレストランでの脂肪分やカロリーに対する規制にも乗り出しているが、6日になってこのファーリー局長の規制案を支持する考えを表明した。

■増税や禁止に批判も

 喫煙の禁止措置や増税に対しては、警察は喫煙者を追い回す以外にやるべきことがあるといった声や、闇市場の拡大を後押しするだけだといった批判が出ている。また、ニューヨーク以外の州や先住民族(インディアン)居留地の免税タバコ店などで、ニューヨークの価格の半額以下でタバコを購入する喫煙者が増加するだけだとの指摘もある。

 昼食後の休憩中に公園でたばこをふかしていた建築監督の女性(55)は、たばこはやめられないと語る。「わたしの同僚はこの前の増税のときに禁煙したわ。もちろん、できることならわたしもやめたいわ。でも非合法にならない限り、公共の場所でも吸えるようにすべきね。だって酔っぱらうわけでもハイになるわけでもないんだから」

 多くの喫煙者と同じく、彼女も禁煙問題を健康問題ではなく市民の権利の問題とみている。「わたしはこの国を愛しているけど、一番愛しているのは自由なの」。

(c)AFP/Sebastian Smith