【7月10日 AFP】飼育員のヤン・ガンクンさん(24)は、2頭のパンダの名前を呼ぶ。「運動」の時間だ。  リンゴを突き刺したさおを上から垂らすと、2頭は後ろ足で立ち上がり、よろけながらも前足で「ゲット」しようとする。このようにして、筋肉を鍛えさせるのだ。  ここは、中国・四川省(Sichuan)の成都パンダ繁育研究基地(Chengdu Panda Base)。8頭を担当するヤンさんは、「全員」をエアコン完備の屋内の囲いに入れたあとで、飼育の醍醐味について語る。 「飼育員の姿を見つけると、パンダたちは走り寄ってきます。飼育員が走ると、パンダたちも走りながら追いかけてきます。人間のやり方を学ぼうとしているみたいに。感動します」  15人の飼育員がいるこの研究基地では、世界中のパンダ愛好者たちに、ヤンさんのような体験ができる機会を提供しようとしている。パンダの窮状に関する啓蒙(けいもう)活動の一環として、臨時飼育員6人を募集するのだ。   8月から、中国内外で募集を開始する。求められる資質は、「明るく、はきはきしていて、愛想が良く、環境保護の問題に強い関心がある」こと。  雇用期間は1か月。任務は、研究の助手をしながらパンダの生態について学び、自分の体験をブログで世界に発信すること。応募方法などの詳細は後日発表される。 ■交尾期と出産期は大忙し  前述のヤンさんは、大学の獣医学部を卒業後、数か月前にこの研究基地に就職した。毎朝6時30分に起きて出勤。パンダたちに餌をやり、囲いの掃除をしたあと、運動させる。  週に2日は「泊まり」だ。不測の事態に備えて囲いのそばで寝る。こうしたことも含めて、月給はわずか1000元(約1万3000円)だ。   動物管理部のフアン・シャンミン氏によると、1987年の開所時、保護されたパンダはわずか6頭だったが、現在は84頭が暮らしている。  飼育員が特に必要とされるのは、春の交尾期と夏からの出産期だ。パンダの発情期の短さが繁殖努力を妨げてきたこともあり、この2つは極めて重要だという。 「この時期、われわれはほとんど休みませんよ。パンダに全身全霊を捧げるのです。とにかく目が離せないから、結婚式を延期した職員さえいます」(フアン氏) ■有名パンダとふれ合うチャンスも  飼育員に雇われたラッキーな6人は、米国生まれで今年2月に中国に返還されたメイラン(Mei Lan、美蘭)など、世界的に有名なパンダたちと接触する機会もありそうだ。  メイランを担当しているのは、10年以上のキャリアを持つチェン・ミンさんだ。メイランは、やや落ち着いたものの、今でも時々かんしゃくを起こすという。 「運動をさぼった時には、リンゴをわざと与えません。すると彼女、かんかんに怒るんですよ。飼育員を完全に無視して、ふて寝しています」  だが、やりがいは大いにあるという。「わたしがここに来たばかりの頃は少なかったパンダも、今ではたくさんいます。わたしたちががんばったからですよ」(c)AFP/Marianne Barriaux