【5月11日 AFP】1993年に発表された、オーストリアの作曲家ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart)の曲を聴くと頭が良くなるという有名な「モーツァルト効果(Mozart effect)」。この効果を否定する研究結果を、同じくオーストリアのウィーン大学(Vienna University)心理学部の研究チームが10日、発表した。

 研究チームは、1993年以降のモーツァルト効果の再現を試みた研究を収集し、効果が存在するとした証拠はないと結論付けた。

 1993年に米カリフォルニア大学(University of California)が行った研究では、モーツァルトの1781年の作品「2台のピアノのためのソナタ ニ長調」を聴かせた学生グループは、別の音楽を聴かせたグループや何も聴かせなかったグループに比べ、論理思考テストの成績が良かったという結果が示されていた。

 一方、研究チームは、世界各地で行われた40本の研究から集めた約3000件の個別事例を分析したが、モーツァルト効果が実際に存在することを示す証拠は見つからなかった。

 研究チームを率いたJakob Pietschnig氏はAFPに対し、「音楽を聴かせたグループは、それがモーツァルトだろうがバッハ(Johann Sebastian Bach)やパール・ジャム(Pearl Jam)であっても、何も聴かせなかったグループよりも成績は良かった。だが、刺激があればパフォーマンスが向上することはすでに知られている事実だ」と語った。

 Pietschnig氏によると、米カリフォルニア大の研究は実験対象がわずか36人しかおらず、誤差を減らす工夫もあまりなされていなかったという。さらに、同氏は、この研究が、肯定的な結果の出た研究の方が報告されやすいという「出版バイアス」の典型的なケースだと指摘した。

 モーツァルト効果が英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表されると、大きな反響を呼び、米国では託児所でクラシック音楽が流され、ジョージア(Georgia)州に至っては新生児にクラシック音楽CDの無料配付が行われた。(c)AFP