【4月22日 AFP】歌舞伎の殿堂として半世紀にわたって親しまれてきた東京・東銀座の歌舞伎座が、建て替えのため今月30日で閉場する。現在「さよなら公演」が行われている劇場は、名残を惜しむ観光客や着物姿の女性客たちで連日にぎわっている。

 1889年開設の歌舞伎座は、火事や1923年の関東大震災、第2次大戦末期の東京大空襲などで破壊され、計3回再建された。反り曲がった屋根が城や仏閣を思わせる純和風の外観が特徴の現在の姿になったのは1950年のことで、戦争で焼け残った骨組みがそのまま使用された。

 歌舞伎座を経営する松竹(Shochiku)は、耐震基準を満たしていない現在の4階建ての建物を5月中に取り壊し、2013年までに総工費430億円をかけて新劇場とオフィス棟からなる高層ビルに建て替える計画だ。完成までの間、公演は新橋演舞場などで行われる。

■「一時代の終わり」惜しむ人々

 それでも、現在の建物が失われることに1つの時代の終わりを感じる人々は多い。

 歌舞伎座前に店を構え名物となっていた甘栗(あまぐり)店も、劇場の閉場とともに閉店する。劇場前では、設置されたカウントダウン時計の前で記念撮影をしたり、消えゆく劇場を絵に残そうとする人の姿も。「戦後復興の象徴だからね、われわれには大事な建物なんだ。壊してしまって良いとは思えない」と絵を描いていた66歳の男性は語った。

 建て替え計画を担当する松竹・歌舞伎座開発準備室の野間一平(Ippei Noma)室長は、自分たちにとっても愛着のある現在の建物がなくなるのは寂しいが、観客に安全な環境を提供するのが責務だと説明。古いものを大事にしつつ新しい挑戦を取り入れてきた歌舞伎の在り方そのものが再建のコンセプトだと述べた。

 新しい劇場には、400年にわたる歌舞伎文化を若い世代に伝えたり、外国人観光客の伝統芸能の理解を助けたりするギャラリーの設置が計画されている。(c)AFP/Shingo Ito