【4月17日 AFP】アイスランド人を不安にさせるには、どうやら火山の噴火だけでは不十分なようだ。

 アイスランド人に、氷河から噴出する炎に驚かないのかと質問すれば、前に見たことがあると返答される。欧州一帯を覆う黒い火山灰については、運命だろう、のひと言。人里離れた農場から深夜に避難することについて聞いても、ささいな不都合にすぎないとぴしゃり。

「パニックする必要があるか?なるようにしかならないのさ」と、次の噴火から農場を守ろうと準備しながら、ピーター・ピーターソン(Peter Peterson)さん(42)は落ち着いて語った。

 14日に発生したエイヤフィヤトラヨークトル(Eyjafjallajokull)氷河の火山噴火で、欧州の空域の大半が閉鎖された。そして、首都レイキャビク(Reykjavik)の東85キロにあるHvolsvollur周辺の農場では、氷河が火山で溶けたために鉄砲水が発生した。

 しかし、「アイスランドのどこに住んでいようが関係ないさ」と、ピーターソンさんは語る。「ある場所では地震が起きるし、別の場所では火山。どこでも危険はつきまとう。アイスランドに住むなら覚悟しないとね」

■準備は万端

 アイスランド人たちが落ち着きはらっている理由は、噴火や北大西洋の容赦ない強風に襲われるアイスランドという土地柄で説明がつく部分もある。しかし、綿密な準備をしていることも重要な要素だ。

 Hvolsvollurの警察署長は「パニックは起きていない」と説明し、住民に配布されている緊急対策マニュアルを示した。噴火の発生場所ごとに起こりうる事態とその対策が詳細に書かれているもので、210ページもある。

 また、火山による氷河の溶融で発生する鉄砲水を監視するカメラも付近の丘に設置された。地元住民であれば「www.vodafone.is/eldgos」にアクセスして、災害が差し迫っているかどうかを確認することができる。署長は「住民らはたいてい2時間前に警報を受けるようになっている」と説明した。

■アイスランド人はおだやか

 別の農家経営者、Gudmundur Sigurdsonさん(60)は、Hvolsvollurのハンバーガー店で、空高く上り東へ向けて流れる噴火の煙を眺めながら、アイスクリームを食べていた。

 Sigurdsonさんは、「アイスランド人はたいていおだやかだ。あまり先のことまで考えない。きょうとあす、それだけ」と語る。

 22歳の息子は、「誰もが人生に2度は噴火を目撃するし、地震も数回、それに吹雪や海の嵐にも遭遇するものだよ」と付け足した。

 アイスランド人が動揺することはないのか、と質問したところ、Sigurdsonさんは当惑した様子をみせ、しばらくして「羊が病気になったときかな!」と笑顔で語った。(c)AFP/Sebastian Smith