【4月4日 AFP】エルサレム(Jerusalem)旧市街(Old City)の聖墳墓教会(Church of the Holy Sepulchre)で復活の主日(Easter Sunday)前日の3日、今年も「聖火の奇跡(Holy Fire)」の儀式が行われ、世界各地から集まった巡礼者たちがろうそくの火を受け渡した。

 これはイエス・キリスト(Jesus Christ)の復活を象徴する儀式で、信徒たちはギリシャ正教(Greece Orthodox)の総主教が持つろうそくに天から火が送られると信じている。この行事は少なくとも、聖墳墓教会が建てられた紀元後4世紀から行われてきたという。

 ギリシャ正教エルサレム総主教のテオフィロス3世(Theophilos III)は「アクシオス(Axios、「汝はふさわしき者なり」の意)」と唱えながら教会の中心にある装飾された墳墓の周囲を3度まわった後、イエス・キリストが埋葬されたとされる場所に建つ神殿に入り、その後火の付いた数本のろうそくを持って再び現れた。

 消火器を持った警察官らが心配そうに見守るなか、集まった大勢の信徒たちがこのろうそくの火を受け渡した。灰色の壁がオレンジ色の光で照らされ、あたりには煙が立ちこめた。

■触っても火傷をしない奇跡の火

 ギリシャ正教の伝承では中世において少なくとも3回、キリスト教の他の宗派が天から聖なる火を受けようと試みたが、その願いがかなえられることはなかったとされている。火の付いたろうそくの束の上で手を前後に動かしていたギリシャのアテネ(Athens)から来たという24歳の青年は「これは奇跡です。これができるのはギリシャ正教の総主教だけなんです。僕は火にさわってみましたが、火傷しませんでした」と話してくれた。

 聖墳墓教会はギリシャ正教、ローマカトリック、アルメニア正教、エジプトのコプト教、シリア正教、エチオピア正教の6つの宗派が共有している。数世紀にわたって形作られてきた伝統を守ろうと、異なる宗派に属する修道士の間で殴り合いになったこともある。今年は平穏に過ぎたが、混雑した場所で何時間も立ち続けたために倒れる人もいた。また、すっかり混雑した雰囲気になってしまって、本来のスピリチュアルな体験ができないと話す巡礼者もいた。(c)AFP