【3月15日 AFP】人工ふ化から育てた成魚がまた卵を産む「循環型」の供給に道を開く「完全養殖」によるクロマグロが、初めて本格的に輸出される。

 輸出を開始した水産加工会社ブリミー(Burimy、熊本県天草市)によると、これまでクロマグロの供給は遠洋漁業か、漁網で捕獲した稚魚からの養殖のどちらかに頼っていたが初めて、人工ふ化させた卵から成魚に育て、その成魚がまた卵を産むという養殖サイクルで可能になった。枯渇の危機にある海洋のクロマグロを保護しながら、市場の高い需要にも応えられると関係者は期待する。

「われわれのマグロは生態系に影響を与えません。海洋資源の枯渇を防ぐ一助になれば」と、ブリミーの浜隆博(Takahiro Hama)取締役は語る。「今年に入って米国への本格的な出荷を始めました。わたしたちの『地球に優しいマグロ』を、活動家たちの抗議を懸念している寿司バーや日本料理店に使ってもらいたい」

 カタールで現在開催中のワシントン条約締約国会議(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and FloraCITES)では、絶滅の恐れがある野生生物として、大西洋・地中海産クロマグロの国際取引を禁止する動きが強まっている。

 大西洋では遠洋漁業による大量捕獲により、ここ数十年でクロマグロの資源量が激減している。この地域で獲れるクロマグロのほとんどが日本向けだ。

 ブリミーは近畿大学(Kinki University)と提携し、同大が人工ふ化した稚魚1500匹を07年12月に導入。2年間で体長約1.2メートル、重さ約40キロの成魚に育て上げた。クロマグロは動きが激しく、いけすでの養殖は困難だったが、同社は大型いけす5基(40メートル四方、深さ約20メートル)に濁った水をはり、マグロの動きを緩和遅め、互いの衝突を減らすことに成功した。

「近大マグロ」と命名されたこの完全養殖のクロマグロは、今年1月から週に20匹ペースでブリミーから米国に輸出されているほか、国内の百貨店などでも1キロ2000~4000円前後で販売されている。2年後までに年間7000~1万匹、約10億円の売り上げを見込んでいる。(c)AFP