【1月30日 AFP】英国が2003年にイラクとの戦争に参戦した経緯を調査している独立調査委員会がトニー・ブレア(Tony Blair)前首相を証人喚問して開いた公聴会から一夜明けた30日の英各紙は、参戦を後悔していないという前首相の証言に衝撃を受けた様子の論調が目立った。

 英紙ガーディアン(Guardian)は、ブレア氏は初めこそ少し緊張していたもののすぐに自信に満ちた態度を取り戻し、「調査委員会の委員らは、よく理解できない新保守主義についてのセミナーを黙って聞いていたかのようだった」と伝えた。

「委員らは後悔していないかと質問することで、ブレア氏に『謙遜への招待状』を手渡した。傍聴席にイラクで死亡した兵士の遺族もいたことは彼も知っていたはずだが、ブレア氏はその招待状を吹き飛ばした。これが、ほぼ完璧だったこの日のパフォーマンスのなかで唯一の欠点だった。傍聴者は自制心を失い、会場はブーイングと涙であふれた」

 公聴会を見た多くの人が、証言はブレア氏らしい自信に満ちたものだったと認めている。ブレア氏が自らの過失を認めるはずがないとして、むしろ前首相の自信に満ちた態度に敬意を払う論調もみられた。

 英紙テレグラフ(Telegraph)は、「トニー・ブレアをどう評価するにせよ、彼は素晴らしいパフォーマーだ」と評し、「参戦の経緯について新しい知見を得ることもなく、お辞儀をしたことを除けばブレア氏が傷つくこともなく」公聴会は終わったと書いた。

 委員の質問が手ぬるかったためブレア氏のペースで公聴会が進んだとの批判もある。英紙タイムズ(Times)は、「極めて生ぬるい質問だった」と断じた。

 英軍の179人が命を落としたイラク戦争の開戦から7年近く、英軍がイラクから撤退してから6か月経った今でも、英国の参戦を決めたブレア前首相の判断は論争を呼んでいる。29日、公聴会の会場周辺では英兵の遺族など数百人が参戦は誤りだったとしてデモを行った。(c)AFP