【1月22日 AFP】2010年サッカーW杯(2010 World Cup)が開催される南アフリカで、W杯期間中に「観戦客を狙った強盗を働く」「警官との銃撃戦も辞さない」と男2人が宣言する様子がテレビで放映され、波紋を呼んでいる。

■ふてぶてしく犯罪を予告

 この映像は、民間の衛星テレビ局eNewsが、W杯開幕を控えた警備体制に警鐘を鳴らす目的で制作した番組の一場面で、15日に放映された。

 映像の中で、ストッキングをかぶって顔を隠した自称「自動車泥棒」は、6月にW杯観戦に訪れる推定45万人の観光客をターゲットにするつもりだと語った。「彼らは貴重品や外国製品を持ち歩いている。おれたちが持っていないものを手に入れられる絶好の機会だ」

「でも、傷つけたりはしないよ。彼らがまた南アに戻ってきてくれれば、また盗めるしね」。36歳で3人の子の父親だという男はそう言って、銃を構えて見せた。

 もう1人の「銀行強盗を10年間やってきた」と話す男は、強盗を邪魔しようとする警官を撃つ用意があると語った。「1秒たりとも躊躇(ちゅうちょ)しないぜ、1秒たりともな」

■政府はテレビ局に情報提供を強要、関係者は自殺

 ところが、この映像はテレビ局の意図を外れ、報道の自由をめぐる論議を誘発するとともに、1人の自殺者を出す結果となった。

 南アフリカは、殺人事件の発生件数が1日平均50件という凶悪犯罪多発国。そのため政府当局は、W杯観戦客らの懸念を払しょくしようと治安強化に必死だ。

 放映後すぐ、ナティ・ムテトゥワ(Nathi Mthethwa)治安・保安相は、2人の発言は最大で禁固25年の恐喝罪に相当するとして、身元を捜査するよう命じた。

 これを受けて捜査当局は、アパルトヘイト時代に地下活動を行う「民族主義者」らの情報開示をジャーナリストに強要する目的で制定されたメディア法に基づいて、eNewsの編集者とレポーターに召喚令状を発行した。編集者らが男たちの身元を明らかにすることを拒んだ場合、訴追される恐れがある。

 また、映像に登場した男たちをeNewsに紹介した仲介者の男性は19日、ヨハネスブルク郊外のソウェト(Soweto)地区で自殺しているのが発見された。「eNewsの編集者がわたしを破滅させた」との遺書を所持していたという。(c)AFP/Griffin Shea