【12月17日 AFP】(写真追加)イスラエルで発見された1世紀ごろの男性のミイラのDNAから、ハンセン病を患っていた痕跡が見つかったと、エルサレム・ヘブライ大学(Hebrew University of Jerusalem)が16日発表し、オンライン科学誌「PLoS ONE」に掲載された。これまでに確認された中では最古の「ハンセン病患者」だという。

■キリストの埋葬布に異説も

 ミイラは、エルサレム(Jerusalem)旧市街近郊の埋葬用の洞くつの中で、布に包まれた状態で発見された。放射性炭素年代測定で、紀元後1~50年に生きていたことが判明している。この洞窟は、イエス・キリストの12使徒の1人でイエスを裏切ったユダ(Judas)が自殺を図ったとされる地区に隣接している。

 ミイラを覆っていた布の織り方も、埋葬用の布としては新発見だという。

 キリストの遺体を包んだと一般的に信じられている布は、複雑な織り方の「トリノの聖骸布(Turin Shroud)」だが、今回ミイラを包んでいた布の織り方は二方向の単純なものだという。同大は、「この布がキリスト時代に埋葬用として一般的に使用されていたとすれば、『トリノの聖骸布』はキリスト時代のエルサレムに起源を持つものではないと考えられる」としている。

■ハンセン病と結核の両方に感染

 ミイラが発見された墓の調査では、この男性に対しては当時一般的だった二次葬(改葬)が行われていないという興味深い事実が明らかになった。

 研究に参加した分子科学者のMark Spigelman)教授は、その理由について、男性がハンセン病を患い、結核で死亡したことと関係があるのではないかと見ている。男性の骨のDNAには、両方の病気の痕跡が残っていた。

 中世ヨーロッパでは、ハンセン病は非常に恐れられたが、16世紀までには事実上根絶した。結核が猛威を振るい始めたからだとする専門家もいる。(c)AFP