【12月4日 AFP】女性が男性より長生きするのはなぜか――謎を解くカギは精子の遺伝子にあるとする日本人研究者らの論文が、2日の医学誌「ヒューマン・リプロダクション(Human Reproduction)」に発表された。

 東京農業大学(Tokyo University of Agriculture)の河野友宏(Tomohiro Kono)教授と佐賀大学(Saga University)の川原学(Manabu Kawahara)准教授は、精子(父性遺伝子)を使わず卵子(母性遺伝子)だけで誕生させたマウスが、精子と卵子の受精によって誕生させた通常のマウスよりもはるかに長生きすることを発見した。

■卵子だけで誕生したマウスは長生きで丈夫

 この「二母性」マウスは、マウスの卵母細胞のDNAを操作して遺伝子発現パターンを父性(精子ゲノム)化し、マウスの排卵卵子に移植して胚(はい)を作製、発育させた。

 研究によると、二母性マウスの平均寿命は841.5日で、普通の受精マウスの平均寿命655.5日を186日も上回った。最も長生きしたのは、二母性マウスは1045日、受精マウスは996日だった。 

 また二母性マウスは体重が普通のマウスよりも軽く、体格も小さいが、免疫系はおそらく普通のマウスより強いことも分かった。

■精子のゲノムにカギ

 この違いは、第9染色体の遺伝子「Rasgrf1」にあると河野教授らは考えている。この遺伝子は出生後の成長に関係しており、通常は父親側の染色体に由来する。このため、この遺伝子によって、ほ乳類のメスがオスよりも長生きする理由を説明できる可能性があるという。

 寿命に関する理論の1つは、次のようなものだ。オスは繁殖競争に勝ち抜くため体は大きくなり、多くの遺伝子を大量にばらまく。その代償として、寿命は短くなる。

 一方のメスは、このような遺伝子を消耗する競争に参加する必要はない。その代わり、出産や子育て、子どもを外敵から守る必要があるため、エネルギーを温存し、生殖における生産性を最適化していると考えられる。(c)AFP