【11月27日 AFP】モスクワ(Moscow)の赤の広場(Red Square)に巨大な赤い国旗がひるがえるなか、共産党の重鎮らが勢揃いして、メーデー(May Day)のパレードが始まるのを待っている。誇らしげなナレーションが入る。「けさの赤の広場はなんと美しいことか。国民1人1人の心と精神には今、赤の広場が宿っていることでしょう」

 1974年のソ連時代のテレビ映像だが、子どものころの思い出に浸りたい人々のためにロシアで新しく開設されたウェブサイトで見ることができる。サイトのアドレスは「CCCP-TV.ru」。「CCCP」はもちろん、ロシア語のソビエト社会主義共和国連邦(Union of Soviet Socialist RepublicsUSSR)の略称を念頭においたものだ。

 ベルリンの壁(Berlin Wall)が崩壊してからちょうど20年。ロシアでは、共産党時代へのノスタルジーはごく普通のことだ。米非営利調査機関ピュー・リサーチセンター(Pew Research Centre)が今月発表した世論調査によると、「ソ連がなくなったのは大きな不運」だと答えたロシア人は58%にものぼった。

■反西洋プロパガンダの中身

 ソ連時代の映像のみを配信する同サイトは、ボリシェビキ革命(Bolshevik Revolution)記念日の11月7日に運営を開始した。この記念日はロシアではもう祝日ではないが、共産党が専制君主制を打倒した記念日として、今なお多くの人を魅了している。

 コンテンツは提携先のロシア国営テレビなどから提供される。その内容はニュースのほかにもコメディーショー、バレエ、子ども向け番組、ソ連が勝ったスポーツ試合などさまざまだが、反西洋プロパガンダも見られる。1974年にベルリン市内のギャンブルを取材したドキュメンタリー映像は、山高帽をかぶってタバコを吸う男たちやドッグレースの模様を映し出し、ソ連では違法とされるカジノの「悪」をとうとうと説く。「ギャンブラーたちは、英国の教育関連予算の2倍、科学研究予算の4倍、道路建設予算の10倍ものお金を賭けている」 

 サイトを運営するUravo社のアンドレイ・アコピアン(Andrei Akopian)社長は、政治的な意図はないと話す。「見たい人に見たいコンテンツを提供する。政治的な文脈から離れることはできないが、視聴者はそれぞれの見方で見るだろう」

 なお、サイトの目的は、完全に資本主義的だ。アコピアン社長は、広告の掲載や共産党時代の遺物を集めるコレクター向けのオークションサイトとの提携を考えている。

■売れる「ノスタルジー」

 なお、「CCCP-TV.ru」だけではなく、ケーブルテレビチャンネルの「Nostalgia」と「Retro」も、ソ連時代のテレビ映像を再放送している。ノスタルジーはよく売れるのだ。

 ロシア紙コメルサント(Kommersant)のあるテレビ評論家は、「このようなチャンネルの人気は、ソ連帝国を復活させたいといった欲望よりは、若かりし頃へのノスタルジーに根ざしているものだ」と話している。(c)AFP/Alexander Osipovich

【参考】CCCP-TV.ru(ロシア語)