【11月5日 AFP】イタリア・ミラノ(Milan)の裁判所で4日、米中央情報局(Central Intelligence AgencyCIA)がイタリアで実施したエジプトのイスラム教聖職者の拉致に関与したとして米国とイタリアの情報機関員ら計25人に有罪判決が言い渡された。

 当時ミラノのCIA拠点の責任者だったロバート・セルダン・レディー(Robert Seldon Lady)被告に禁固8年、そのほかの米国人工作員ら22人に同5年、イタリア人2人に同3年が言い渡された。

 当時CIAのイタリアにおける責任者だったジェフリー・キャステリ(Jeffrey Castelli)被告ら米国人3人は外交特権が認められ、当時イタリアの諜報機関、情報・軍事保安庁(SISMI)長官だったニコロ・ポッラリ(Nicolo Pollari)被告は国家機密規定によって有罪にならなかった。

 事件が起きたのは2003年2月17日。アブ・オマル(Abu Omar)の名で知られるエジプトのイスラム教聖職者、オサマ・ムスタファ・ハサン(Osama Mustafa Hassan)師がミラノの路上で、CIAとSISMIによって拉致された。

 急進的・反政府的とされてイタリアに政治亡命していたオマル師は、イタリア北東部のアビアーノ(Aviano)空軍基地からドイツ・ラムシュタイン(Ramstein)の米軍基地に移送された後、エジプトのカイロ(Cairo)に送られて拷問を受けたとされる。

 この作戦はジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)政権によって計画された。関与した工作員は公然と携帯電話で話すなど、この種の作戦で通常とられる注意を怠っていた。

 イタリア政府は国家機密が明かされるおそれがあるとして繰り返し裁判の中止を求めた。これにより2007年6月に始まった裁判の進行は遅れたものの、イタリア最高裁が捜査の一部は国家機密の規定に抵触していたものの、検察が適法に収集した証拠は公判で使うことができるとの判断を下したことで判決にたどり着いた。

 人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(Human Rights Watch)はこの判決を歓迎した。一方、米国務省のイアン・ケリー(Ian Kelly)報道官は判決は残念とする米政府の声明を発表した。(c)AFP/Gina Doggett