【10月21日 senken h】ヨーロッパで最古の歴史を持つ王国スコットランドと言えば、豊かな自然環境がもたらす高品質な生地や伝統のタータンで知られている。一方で、そんな伝統をベースにした新しいクリエーションも広がっている。文化に培われたスコットランドならではの逸品と、国内外で活躍する才能あふれるデザイナーを紹介する。

■ベグ・スコットランド(BEGG Scotland
 1869年創業のアレックス・ベグ(Alex Begg)社は、ペーズリーのショールからスタートし、現在は仏ラグジュアリーブランド向け商品も含め、カシミヤやアンゴラ・ウールのマフラー、ストール、ブランケットなどを生産する。糸は英国とイタリアから購入しており、とくにスチーマーを使い温湿度管理が徹底されているカシミヤ糸保管庫の管理は厳重だ。今年1月の米国大統領就任式でバラク・オバマ(Barack Obama)大統領が着用したのもベグの商品。その美しい色合いと品質の良さはまさに逸品。

■ハリスツイード(Harris Tweed
 スコットランド北西部、アウター・ヘブリディーズ諸島で、染工、紡績、家庭内手織り、フィニシングまで行ったものを「ハリスツイード」と呼ぶ。多色をブレンドして撚糸した、さまざまな色の混じった糸がハリスツイードの特徴だ。現在は洋服だけでなく、インテリアファブリックやバッグなどに用途を広げて提案。歴史を守るため、家庭で織らないとダメというルールは、内職の仕事を奪わないという大切な役割もある。

■ ジョンストンズ(JOHNSTONS
 1797年創業のジョンストンズ社は、原毛から紡績、ウィービング、ニッティングまでを行う、英国でも珍しい一貫生産工場を持つ老舗メーカーだ。作られるのはカシミヤやビキューナをはじめとする高級素材を使った生地やスカーフ、ホームファニシング。本物を求める多くのクチュールブランドのスカーフやマフラーを手がける確かな品質が自慢で、最終段階でのハンドリペアによる仕上げに手仕事の奥深さが表れている。

■ グレンロイヤル(GLENROYAL
 多くのセレクトショップで扱われている「グレンロイヤル」は、スコットランド中西部のエア・シャーで作られる。熟練の職人による、ハンドメードで一生モノのレザーバッグと小物だ。レザーのエッジをすべて手で磨き上げるなど丁寧な手仕事がされている。使われるブライドルレザーは最高級のもので、厚みがあるが耐久性に優れ、長く使えるのが特徴。実用性や機能性も考え抜かれたデザインも秀逸。

■マッキントッシュ(MACKINTOSH
 数々のラグジュアリーブランドで採用されている「マッキントッシュ」。ゴム引き素材のコートがあまりにも有名だが、その縫い目をテーピングする技術の習得には3年の月日を要するという。創業当時からの製法を頑なに守り、現在も1着1着ハンドメードを貫いている。モダンブリティッシュを体現するハイクラスなアウターは、過度な装飾を排した洗練のデザインが光る。

■ ロッキャロン(LOCHCARRON
 日本の大手セレクトショップにも生地が販売されており、「ダイアナ」や「ハローキティ」のタータンでも有名なメーカーが「ロッキャロン」だ。レディス用やネクタイなどに使われるライトクラス、カーテンなどに使われるミドルクラス、正装用に使われるヘビークラスの3タイプ、1200~1300種類のタータンを生産する。また、英国のマッケンジー家やブラック家などの各血統やラグビーチーム「ライオンズ」のオリジナルタータンもオーダーメードで生産している。

■ ホイック・カシミヤ・オブ スコットランド(Hawick Cashmere of Scotland
 レディスニットを中心にメンズ、ストール、帽子などを生産するホイック・カシミヤ・カンパニー。英国、スイス、オーストリア、米国、日本など直営店12店を展開する、カシミヤ産地のホイック地域を代表するメーカーだ。1番大事な工程はカシミヤが浮き上がって柔らかくなる洗い加工で、熟練工がさわって確かめながら、洗いを繰り返す。98年にオープンさせたエジンバラの直営店では、49色から好みのカラーを選び、納期4週間でセミオーダーができる。(c)senken h / text:加藤陽美(Office Hash)

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