【10月16日 AFP】かつて世間をあっと言わせる作品で英国アート界をリードしたダミアン・ハースト(Damien Hirst)だが、最近では自ら描いた絵画の衝撃的なひどさで世間をあっと言わせている。

 ロンドンの由緒ある美術館のひとつで、ディエゴ・ベラスケス(Diego Velazquez)やティツィアーノ(Titian)の作品を所蔵するウォレス・コレクション(Wallace Collection)では現在、ハーストが2006年から08年にかけて描いた英国では初披露となる25点の絵画が展示されている。主に人間の頭がい骨やサメの骨を描いた暗い作品だが、動物のホルマリン漬けやアシスタントが制作した水玉模様の絵画などとは違い、ハースト自ら筆を執って描いたものだ。

 しかし、これらの作品は酷評されている。

 「不快な作品。フランシス・ベーコン(Francis Bacon)と(英国の人気小説シリーズの主人公)エイドリアン・モール(Adrian Mole)が出会ったようなものだ。レンブラント(Rembrandt)やニコラ・プッサン(Nicolas Poussin)、ティツィアーノ、ジャン・オノレ・フラゴナール(Jean Honore Fragonard)など巨匠の作品が所蔵された場所で彼らは一体何をしているんだ?」タイムズ(Times)紙の批評家は厳しいコメントを寄せた。

 ガーディアン(Guardian)紙は、「最悪なことにハーストの絵画は素人っぽくて青くさい。筆遣いには、見る者に画家が創作したものを信じさせるだけの活力や勢いがない。ハーストはそれすらも身につけていない」と酷評。

 デーリー・テレグラフ(Daily Telegraph)紙のサラ・クロンプトン(Sarah Crompton)氏は、「目がくらくらする」と批評している。

 「作品1つ1つを見ようとすると問題が起こる。集団ではインパクトがあるが、1つ1つでは合格レベルに達していないものが多い。細かなところはためらいがちに塗られていて、よく見ると構図は破綻している」

 ハーストは、現代美術誌ArtReviewで発表された今年の現代アート界で最も影響力のある100人のリストで、前回の1位から48位に急落している。(c)AFP

【参考】ウォレス・コレクションのサイト(英語)