【9 月14日 AFP】農業分野での貢献でノーベル平和賞を受賞した米国人農学者ノーマン・ボーローグ(Norman Borlaug)氏が12日、がんによる合併症で米テキサス(Texas)州ダラス(Dallas)で死去した。95歳だった。同氏が1984年から所属していたテキサスA&M大学(Texas A&M University)が、明らかにした。

「緑の革命(Green Revolution)」の父とも呼ばれるボーローグ氏は、病気に強い小麦の新品種を開発。生産性が2~3倍も向上した新種の小麦は、多くの途上国で飢饉問題の解決に貢献し、この功績で1970年にノーベル平和賞を受賞した。

 世界食糧計画(World Food ProgrammeWFP)のジョゼット・シーラン(Josette Sheeran)事務局長は、「人類の歴史において、ボーローグ氏ほど多くの命を救った人物はいない。飢饉の撲滅にむけた同氏の献身的な努力は、多くの国々で食料生産に革命をもたらし、数百万人を救った」と述べ、同氏の死去を悼んだ。

 ボーローグ氏は1914年3月、米アイオワ(Iowa)州で農場を営む家庭に生まれた。ノルウェー人の祖父を通して多くの良識を身につけ、人類の生存に不可欠な食糧問題と、道徳的な正しさに関心を持つようになった。

 ミネソタ大学(University of Minnesota)を卒業したボーローグ氏は、第2次世界大戦の勃発前に、米農務省林野部に入る。1944年、メキシコの科学者らとともに、小麦の新種開発に取り組んだ。

 こうして開発された小麦が後にインドやパキスタンに導入され、ボーローグ氏が「人口の怪物」と例えた両国の食糧不足の解消につながった。同氏自身の記録によると、両国の小麦生産高は1965~70年の間に1100万トン以上増え、2倍近い増産となった。インド、パキスタンでの成功により、ボーローグ氏の小麦は中米、中東、アフリカへも導入され、多くの人びとを飢えから救った。

 こうして、1970年にノーベル平和賞を授与されたボーローグ氏は記念講演で「人類は、将来において偽善的な後悔の念とともに人類を災難から救うのではなく、今、手だてを尽くして飢饉を防がなければならない。それは可能だ」と述べた。さらに、「飢饉に立ち向かう戦士」として生涯を捧げると誓った。

 米国でも、ボーローグ氏は、民間人に与えられる最高の栄誉とされる大統領自由勲章(Presidential Medal of Freedom)、議会名誉黄金勲章(US Congressional Gold Medal)の2つの賞を受賞。このほかインドから勲章「パドマ・ブーシャン(Padma Vibhushan)」を、日本、ボリビアなど世界各国の多数の大学から名誉学位を授与されている。(c)AFP/Andrew Beatty