【8月24日 AFP】マレーシアでビールを飲んだために、飲酒を禁じるイスラム法に基づき、宗教裁判所からむち打ち刑を言い渡されたイスラム教徒の女性モデルが24日、刑の執行を猶予され、突然釈放された。

 このモデル、カルティカ・サリ・デウィ・スカルノ(Kartika Sari Dewi Shukarno)さん(32)は、7月にむち打ち6回を言い渡され、比較的穏健なイスラム教国であるマレーシアのイスラム法下で、女性に対するむち打ち刑の初執行となるはずだった。

 スカルノさんは23日、マレーシア北部ペラ(Perak)州にある両親の家から3人の宗教執行官に連行され、刑が執行される首都クアラルンプール(Kuala Lumpur)郊外の刑務所へ移送される予定だったが、スカルノさんを乗せた車はわずかに走ったところで小一時間にわたって停止し、その後引き返した。

 パハン(Pahang)州の執行責任者はスカルノさんの家族に「逮捕状と裁判所命令を現段階で執行できない」と述べたという。この執行責任者は猶予について、当局の高位からの命令で、スカルノさんの身柄は正式に釈放されたと明かしたが、今後刑が執行される可能性があるかどうかについては分からないと答えた。

 当のスカルノさんは執行猶予の決定を伝えられて当初、車から降りようとしなかったが、報道陣に「驚いた。自分の立場が分からない。(自分が)有罪なのか無罪なのかはっきりした決定がほしい」と語った。

 スカルノさんは刑言い渡しの後、控訴を拒み、公衆の面前でむち打ちを執行するよう当局に申し立てていた。釈放後には警察署へ向かい、自分が身柄の拘束を逃れたわけではないことを明確にしたいという意図で、自ら報告を提出した。

 スカルノさんの父、スカルノ・ムタリブ(Shukarno Mutalib)さん(60)は当局の突然の180度転換に怒りを示し、執行猶予決定は飲酒を禁じるイスラム教に悪い影響を与えると非難し、「わたしの娘は刑の執行を望んでいる。人びとが宗教を軽んじることがないか心配だ。そして、わたしの娘をおもちゃにしないでほしい」と語った。(c)AFP/M. Jegathesan