【8月17日 AFP】戦争に行くということは、常に命を落とす覚悟を求められるものだが、ロボット兵器の開発が進む中、数世紀にわたる真理が変わろうとしている。

 アフガニスタンやイラク、パキスタンで活躍する米軍の無人攻撃機の「パイロット」は、攻撃が実行される戦場から数千キロも離れた場所で操縦かんを握り、危険にさらされることなくミサイルを発射することが可能だ。また、危険なルート上での物資運搬を担当し、敵の戦車を発見すると攻撃するロボットも現在開発中だという。

 急増する無人攻撃兵器の存在は、自国の兵士や市民を砲火にさらす必要がなくなる点から、国家にとっては戦争の誘惑が高まる可能性がある。専門家は、ロボット兵器には倫理的・法的な問題が山積しているうえ、政治指導者や軍指導部もその影響力を十分に理解しているとは言い難い状況にあると指摘している。

Wired for War』の著者、ピーター・シンガー(Peter Singer)氏はAFPに対し、「政治への影響はどうだろうか。人的コストをかけずに軍事作戦を実施するということは非常に理にかなっているが、一方で武力行使のハードルが下がる可能性もある」と語った。

■人間の関与は低下する?

 軍の司令官たちは、無人攻撃兵器は戦闘を有利に進め、兵士の生命を守り、「退屈で汚く危険な」任務から解放する存在と見ている。

 実際、巡航ミサイルや空爆などの多用で、米国民の中には戦争は遠く離れた場所での出来事だとの意識がますます強まっている。こうした中、ロボット兵器が「痛みを感じない」軍事行動を増加させる可能性があると、元米国防次官補のローレンス・コーブ(Lawrence Korb)氏は警告する。

 ロボット技術とともに、軍隊は未知の領域に足を踏み入れつつある。戦場に数々の高性能ロボット兵器が展開し、自動的に攻撃を開始する無人兵器が導入される未来も遠くはないかもしれない。

 米政府関係者は、攻撃を開始する際には常に人間の判断が介在すると強調する。しかし専門家は、ロボット技術が発展するにつれ、兵器システムの制御が複雑化することを警告している。軍事研究においてはすでに、人間の操作がより少なくて済む自動制御ロボット兵器の開発が進んでいる。米空軍では、操縦者1人で最終的に3機の無人攻撃機を操縦する計画を立てているという。

■責任はどこに

 米国防総省でロボット兵器の開発に携わるエレン・パーディー(Ellen Purdy)氏によると、軍では、ロボット兵器を武力紛争に関する国際・国内法規に適合させるための研究が行われているが、「答えはまだ見つかっていない」。

 現在、ロボット兵器開発を行う国は数十か国に上り、人権団体などはロボット兵器が人間による命令なしで攻撃を行う可能性に懸念を示している。ロボット兵器が戦争犯罪を犯した場合、ロボット兵器が登場する以前に定められた国際法で訴追が可能かどうかが不透明なためだ。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights Watch)の軍事アドバイザー、マーク・ギャラスコ(Marc Garlasco)氏は、「誰の責任になるのか。システムの開発者か、ソフトウエアの開発者か、兵器開発を担当した会社なのか。この問題にはまだ誰も直面していない。運よくそこまでの事態に至っていないだけだが」と強調した。(c)AFP/Dan De Luce