【8月9日 AFP】北京五輪開幕から8日で1年が経つ。しかし、五輪のメイン会場となった北京国家体育場(Beijing National Stadium)、愛称「鳥の巣(Bird's Nest)」はこの間、スポーツイベントの会場として使われたことがなく、都市の「無用の長物」となりつつある。

 わずか2週間という短期間の五輪で劇的な印象を与えることを意図してつくられた建造物を一体どう使えばいいのか――首都北京(Beijing)は五輪から1年後の今、「過去の遺物」症候群に悩まされている。

 8万人収容のスタジアムである鳥の巣は、連日観光客でにぎわっている。だが、7日に開催された09年サッカーイタリア・スーパーカップ(Italian Super Cup)が北京五輪以来、1年ぶりにここで開かれた大規模なスポーツイベントだ。

 鳥の巣が使われてこなかった理由は、このスタジアムをトップクラスのイベントのために使いたいという要望が北京当局者の間にあるからだ。地元のサッカーの試合のために使用することなど問題外とされている。鳥の巣があまりにも巨大で、観客が8万人以下の場合、会場ががらんとして見えるためだと、あるメディア・コンサルタントは指摘している。

 一方、鳥の巣のすぐ付近にある五輪水泳会場だった「水立方(Water Cube)」は、公共プールとして一般向けに開放されている。鳥の巣同様、この施設にも連日、大勢の見物客が押し寄せているが、こちらは追加料金を少し払えば、練習用プールを利用できる。だが、ここでも大規模な競技イベントはめったに開かれていない。

 北京市当局は、これらの五輪会場施設の新たな用途を見つけようと懸命に努力はしているが、過去の五輪開催都市と同じ道を歩んでいる。どの開催都市でも会場施設の荒廃は、共通の現象だ。2002年にサッカーW杯の開催国となった日本や韓国でも、競技場は重荷となりつつある。

「五輪会場施設が『過去の遺物』になってしまうという問題は次第に深刻になってきている。国際五輪委員会(International Olympic CommitteeIOC)はこの問題にもっと注意を払うべきだ」と、スポーツ・マーケティング・コンサルティング会社のポール・レネール(Paul Renner)社長は指摘する。「会場施設の維持に関する懸念が増えているなか、IOCは将来、五輪開催が決定した都市に対し、この点をはっきりと伝えておく必要がある」(c)AFP/Peter Harmsen