【8月7日 AFP】ヒッピーの全盛時代だった1960年代、ハリウッド(Hollywood)を震かんさせ、世界中の新聞の見出しになった「マンソン・ファミリー」連続殺人事件。あれから40年を迎えるが、身の毛もよだつような一連の殺人事件への関心が、これまでになく高まっている。

 事件は1969年8月9-10日に発生した。中心人物はチャールズ・マンソン(Charles Manson、現在74歳)受刑者だ。ロサンゼルス(Los Angeles)でカルト集団を率いていたマンソン受刑者は信者らとともに、終末的な人種戦争のぼっ発を狙って白人富裕層の居住地区で無差別殺人を実行。計7人を殺害し、169人を負傷させた。

 なお、被害者には、映画監督ロマン・ポランスキー(Roman Polanski)の妻で妊娠8か月半だった女優シャロン・テート(Sharon Tate)さん(当時26歳)も含まれていた。

 マンソン受刑者と信者4人は当初、死刑判決を受けたが、カリフォルニア(California)州が1972年に死刑制度を廃止したことに伴い、終身刑に減刑された。以来、5人はたびたび仮釈放申請を行っているが、却下されている。

■事件がヒッピー時代の終わりを告げる

 このマンソン事件からちょうど40年。事件に関わった受刑者の何人かは自分のウェブサイトを開設している。事件に関する本も再版される予定。事件現場を訪ねるツアーは、盛況だ。

 マンソン事件に関するツアー、その名も「ヘルタースケルター」を提供している旅行代理店のスコット・マイケルズ(Scott Michaels)氏は、「事件は今やアイコンのようなステータスを得ている」と話す。

 事件とその後の裁判を記録した『Five to Die』がまもなく再版される英国人ジャーナリストのアイボア・デイビス(Ivor Davis)氏は、マンソン事件は「ヘイトアシュベリー、ウッドストック、ラブアンドピース、隣人愛を説くヒッピー時代に終止符を打った」と話す。「ヒッピーは、隣人を抱きしめてベッドを共にしよう、と呼びかけていたが、突然マンソンがやってきて、『隣人を殺せ』と言ったようなもの」――つまり事件は、人を殺しただけでなく、1つの世代や全体的なムード、空気をも殺したというのだ。

 事件を担当した元ロサンゼルス地方検事で『Helter Skelter: The True Story of the Manson Murders(ヘルタースケルター:マンソン事件の真実)』を共著したビンセント・バグリオシ(Vincent Bugliosi)氏は、「事件の残忍さはパニックを招いた」と振り返る。

   「ロサンゼルスでは当時、夜になっても家にカギをかけない地域もあった。事件が残忍・残酷で動機も見えない無差別殺人だったため、街が恐怖に包まれた」(c)AFP/Rob Woollard