【7月12日 AFP】ドイツ・ドレスデン(Dresden)で1日、訴えられていたロシア生まれのドイツ人の男(28)が、原告のエジプト人女性を、裁判所内で18回にわたって刺して殺害した事件をめぐり、イランの首都テヘラン(Tehran)のドイツ大使館前で10日、イスラム教徒150人の学生が抗議行動を展開し、大使館に生卵を投げつけるなどした。AFP特派員が取材した。

 ドレスデンの事件でエジプト人女性を刺殺したのは、ロシア生まれのドイツ人で無職のアレックス・W(Alex W)容疑者(28)。名字はイニシャルでしか公表されていない。同市在住のエジプト人女性マルワ・シェルビニ(Marwa al-Sherbini)さん(33)に対し、イスラム教徒の女性がかぶるスカーフを指して「テロリスト」などとののしったことでシェルビニさんが訴え、男には罰金が命じられたが、これを不服として控訴。シェルビニさん側の陳述の日に、出廷して犯行に及び、現在は殺人罪で起訴されている。

 妊娠もしていたシェルビニさんは、夫と3歳の息子の目の前でめった刺しにされた。また、夫で遺伝学者のエルウィ・アリ・オカズ(Elwi Ali Okaz)さんも男に刺されたうえに、駆けつけた警察官に犯人と間違われて発砲され被弾し、重傷で入院している。 

 ドイツ内外のイスラム教徒らは事件を「スカーフ殺人事件」と呼び激しく非難している。エジプトのアレクサンドリア(Alexandria)で5日に行われたシェルビニさんの葬儀には数千人の弔問客が集まった。

 1日のテヘランでの抗議では、イラン人学生らが「ドイツに死を、ヨーロッパに死を」などとスローガンを叫んだり、アンゲラ・メルケル(Angela Merkel)独首相をののしり、ドイツ大使館の側壁に「アンゲラはナチスだ」などと落書きする者もいた。

 イラン政府は10日、テヘラン駐在のHerbert Honsowitz独大使を呼んでシェルビニさん殺人事件に抗議するとともに、ドイツ政府に対し少数派民族の権利擁護の強化に努めるよう求めた。(c)AFP