【7月8日 AFP】経済危機においては、自殺と殺人、心臓まひによる死亡の件数が増えるが、交通事故は減る――英国の研究者らによるこうした研究結果が、8日の英医学専門誌「ランセット(The Lancet)」に発表された。

 オックスフォード大(Oxford University)とロンドン大学衛生熱帯医学校(London School of Hygiene and Tropical Medicine)の研究者らは、1970年から2007年までの欧州連合(EU)26か国のデータをもとに分析を行った。

 その結果、65歳以下の自殺者の数は、失業率が1%上昇するごとに0.79%ずつ増えることがわかった。殺人件数についても同程度の増加が見られた。

 対照的に、車をなるべくひかえて徒歩で移動するようになる傾向を反映してか、交通事故死の件数は1.39%減少した。

 以上の結果から、研究グループは、政府が労働市場の活性化に向け思い切った措置をとることで、経済も人々の命も救われると提言している。具体的には、家計、家賃、失業保険などのために政府が国民1人あたり10ドル(約1000円)を拠出するだけで、失業に関連した自殺が0.038%減るという。

 調査は貧困国のデータを含まないなどの点で十分とは言えないが、研究者らはこうした結果が過小評価されている可能性があると指摘する。というのも、ストレス、不安、栄養の低下などが健康に及ぼす影響はすぐには現れず、さらには、1929年の世界大恐慌の影響の一部が5-7年後になって表出したという過去のデータがあるためだ。(c)AFP