【6月25日 AFP】ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)首相が、モスクワ(Moscow)のスーパーマーケットを電撃視察し、驚く店長らに対し商品の値段を下げるよう指示した。

 ロシア最強の男、プーチン首相は最近、メディア受けする行動で、緩和の兆しがない経済危機を政府がしっかり管理していることを国民にアピールしているが、このスーパー訪問もそうした一幕となった。

 25日の露コメルサン(Kommersant)紙によると前日、プーチン首相は官邸で行っていた小売業界の状況に関する会議を中断し、出席者を連れて近くにあるロシア最大の小売チェーン、ペレクリョーストック(Perekrestok)の1店舗を訪れた。

■「高すぎる」と一喝

 ペレクリョーストックの幹部や生産業者らを引き連れ、商品棚の間を練り歩いたプーチン首相は、多くの商品の売値が生産者価格よりもずっと高いのはなぜかと尋ねた。

「このソーセージはなぜ240ルーブル(約740円)もするんだ?これが当たり前か?」と聞いたプーチン首相に対し、ペレクリョーストックを所有するX5リテール・グループ(X5 Retail Group)の顧客担当責任者ユーリ・コバラゼ(Yuri Kobaladze)氏は「こちらのソーセージは高品質だからです。ご覧になってください、こちらのソーセージなら49ルーブル(約150円)です」と答えた。

「高すぎるな」。プーチン首相は切り返した。

「いや、そんなことは・・・」と、政府の対外諜報機関の広報局長としての経歴をもつコバラゼ氏が続けようとすると、プーチン氏はさえぎるように「その値段のつけ方を見せてあげよう」と言うと、紙切れを取り出し「このソーセージだったら、ほら、52%も上乗せじゃないか」と畳み掛けた。

 コバラゼ氏にとってさらに頭が痛かったのは、豚肉製品のコーナーに移ったときだ。プーチン首相は、スーパーが原価の倍以上の価格をつけていると言い出した。「これなんて2倍だ。おかしくないか?」-「明日値下げします」。コバラゼ氏は値下げを約束させられた。

 インタファクス(Interfax)通信によると、官邸に戻ってから再開した会議で、プーチン首相は生産者と小売業者、消費者の間の価格バランスを改善しなければならないと切り出し、「そうすることでしか、社会的公正は達成できない」と力説した。

■背景はロシアの厳しい経済情勢

 この日スーパーを「急襲」する3週間前にも、プーチン首相はセメント工場の操業が停止したために苦境に置かれた都市を電撃訪問した。このときは、オリガルヒ(新興財閥)の一人、ロシア・アルミニウム(Russian Aluminum)のオレグ・デリパスカ(Oleg Deripaska)社長に向かって、労働側との操業再開合意に署名するようしかりつけながら、ペンを放り投げたことが広く報道された。

 プーチン首相がこうした警告を企業幹部らに発している背景には、経済危機の影響で、ロシア経済が5月のGDPで前年同期比マイナス11%と依然、厳しい状況がある。(c)AFP