【6月22日 AFP】(一部更新、写真追加)フランスのニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)大統領は08年の改憲を受けて、21日の議会での大統領演説で、イスラム教徒の女性が身体を覆って着用する衣服ブルカについて「フランスでは歓迎されない」と発言した。

 サルコジ大統領は「ブルカは宗教の象徴ではなく、抑圧のしるしだ。フランス共和国の領土では歓迎されない」と述べた。
 
 議会では一部の議員がこれに同調し、国内に居住するイスラム教徒の女性が公の場で、全身をブルカで覆うことが、フランスの世俗主義と女性の権利を侵害するものではないかと主張し、特別調査を求めている。

 だが、仏ムスリム評議会(French Council for the Muslim ReligionCFCM)は、ささいな事柄について国会議員は時間を浪費していると批判している。代表のMohammed Moussaoui師は前週、「(ブルカに関する特別調査は)イスラム教とフランスのイスラム教徒に烙印(らくいん)を押すようなもの」とけん制した。

 一方で、パリ(Paris)のグランモスクの代表、Dalil Boubakeur師は、「(大統領の考え方は)フランスの世俗主義と共和主義にかなっている」として、サルコジ大統領を支持している。

■オバマ大統領とは意見が分かれる
 
 この件に関し、サルコジ大統領はバラク・オバマ(Barak Obama)米大統領とは一線を画している。2週間前に訪仏しサルコジ大統領と会談したオバマ大統領は、「西洋諸国は、イスラム教徒が適当と考える宗教的行為を妨げないようにすることが重要」と語り、女性のイスラム教徒がヘッドスカーフを着用する権利を擁護した。

 これに対し、サルコジ大統領は「公務員は、カトリックであろうとユダヤ教徒であろうと、ギリシャ正教、プロテスタント、イスラム教徒であろうと、宗教的なものは身につけてはならない」と反論。また、ヘッドスカーフは、自分の意志で着用する場合には認められる、と付け加えた。

■2004年にはヘッドスカーフを禁止

 推定500万人と欧州最大のイスラム教徒人口を抱えるフランスでは04年、世俗主義を擁護するため、公立校でヘッドスカーフなど「明白な」宗教的シンボルの着用を禁止する法案が可決された。

 08年には、フランス国籍を申請したイスラム教徒のモロッコ人女性について、ブルカを着用しており夫に「服従」した生活を送っているとの報告があったため、申請が却下されるという事件があった。

 公式データはないが、フランスでブルカを着用している女性は数千人いると推定されている。(c)AFP