【6月16日 AFP】中国湖北(Hubei)省巴東(Baodong)で、性交渉を強要しようとした役人を殺害したとして殺人罪に問われ、その後、中国のインターネットで政府の不正に対する抵抗のシンボルとして「英雄」となったウエートレスの裁判が16日開かれ、女性は釈放された。

 巴東のホテルにウエートレスとして勤務していた鄧玉嬌(Deng Yujiao)さん(21)は、5月に地元高官を刺殺したとして殺人罪で起訴された。鄧さんは、性的暴行を受けそうになり自衛したと申し立てた。

 事件後に殺人の容疑で拘束された鄧さんは、役人から性的な行為を求められ、拒否したところ何度も殴られたと主張。また、中国国営新華社(Xinhua)通信によると、鄧さんは、性交渉を要求してきた別の役人にもけがをさせた罪にも問われた。このニュースが報じられると、ネット上のチャットルームやブログで、鄧さんを擁護する意見が沸騰した。

 当局は最終的に、インターネットで起きた大規模な世論の圧力に屈し、鄧さんを、意図的に暴行を加えた罪で起訴した。中国の国営英字紙チャイナ・デーリー(China Daily)によると、この罪状でも死刑になる可能性があったという。

 中国政府当局の不正、権力乱用、役人の刑事免責に日ごろからうんざりしていたネット利用者らは、ただちに鄧さんを支持し、鄧さんの事件は、共産党が厳しく管理する社会における不正の象徴となった。

 16日に巴東で開かれた裁判で、鄧さんは限定責任能力があったと認定され有罪判決を言い渡されたが、釈放された。同裁判所の判事がAFPに語った。

 この判事によると、裁判所は、鄧さんがはたらいた過度の暴力に刑罰を科さないことを決めた理由について、それが自衛だったこと、鄧さんが自首したこと、そして事件に関与した役人らが「致命的な過ちを」おかしていたことなどを挙げたという。

 今回の事件は、伝統的なメディアが厳しく管理され、司法の政府からの独立がほとんど認められていない中国において、インターネットの力が増大していることを示すものとなった。(c)AFP/Marianne Barriaux