【6月5日 AFP】台湾・台北(Taipei)で医師をしているデビッド・コウ(David Ko)さん(54)は、てん足用の靴のコレクターだ。古代中国で約1000年間、女性に対して行われてきた風習で、足が大きくならないよう、幼児期に足の骨を折って半分に折り曲げ、この状態で布を巻かせるというものだ。

 コウさんは、6歳のときにてん足の女性を見かけ、その足の小ささに魅了された。そして過去30年間に、てん足用の小さな靴を5000足集めた。その多くには美しい刺繍がほどこされている。コウさんはこれらの靴を「セクシー」と表現し、魅力を次のように語る。「古代中国では、てん足はファッションの一種だった。そのロマンチックなファッションは、現代のトレンドにも影響を与え続けている」

 また、ハイヒールの起源は、中国にあるとも考えている。てん足用の靴は、重心バランスのために、ヒールが高かったからだ。

 コウさんは、てん足に関してこれまでに3冊の本を執筆。コレクションの一部は、中国やカナダ、ワシントンD.C.の国立自然史博物館(National Museum of Natural History)でも展示された。

■女性の意見

 彼のこうした熱意へは、批判があるのも当然だ。一部の女性たちは、てん足は生涯にわたり痛みを伴う拷問の一種であり、ファッションの中でも極端な例だと指摘する。

 台湾のある人権団体の女性は、「てん足は、女性が男性と同等の権利を持たなかった家父長制度において、女性の動きを制限して男性の欲望を満たすために強いられたもの。美の概念の背景には抑圧がある」と主張する。

■起源と経緯

 女性の足をいわゆる「三寸金蓮(約9センチ)」に保つためのてん足の起源については諸説あるが、10世紀ごろの皇帝が、両方の足をカラフルなリボンで縛った踊り子の小さな足をほめたことがきっかけだと、考えられている。

 足の小ささは女性の美の象徴とされ、この風習が全土に広まるにつれて、てん足をしていない女性は結婚できないという状態にまでなった。前出のコウ氏によると、裕福な女性ほど足は小さく、お見合いでも、男性はまず相手の「足のサイズ」を尋ねることが多かったという。

 当時の作家や詩人も、てん足を「金のハス」と呼んで称賛し、女性のセクシャリティーの象徴にまで高められた。

 女性は、てん足を夫や恋人以外の男性には決して見せなかった。てん足は男性の性的欲望をかり立て、夫や恋人は、砕いたアーモンドのかけらをてん足の指の間にはさんだ状態で食べたり、同じく指の間にはさんだコップからお酒を飲んだりしていたことが知られている。

 この風習は1949年に中華人民共和国が建国されたのちに完全に姿を消した。現在でも、雲南(Yunnan)省などのへき地では、老齢の女性に、てん足の痕跡を見ることができるという。(c)AFP/Amber Wang