【6月1日 AFP】1912年に沈没した豪華客船タイタニック(Titanic)号の最後の生存者となったミルビナ・ディーン(Millvina Dean)さんが5月31日、英ハンプシャー(Hampshire)州アシャースト(Ashurst)近郊の養護施設で死去した。97歳だった。英国放送協会(BBC)とPA通信が同日、報じた。

 1912年2月12日に生まれたディーンさんは、同年4月14日、タイタニック号が大西洋に沈み1500人の死者を出したとき、生後わずか9週間の一番若い乗客だった。母親と兄も一緒に助かったが、父親は死亡した。

 一家は、米カンザス(Kansas)州でたばこ屋を開店し新しい生活を始めようと、英サウサンプトン(Southampton)から乗船していた。

 事故後、ディーンさんは家族とともにサウサンプトンに戻ったが、母親が再婚しようとした8歳の頃まで、タイタニック号に自分が乗船していたとは知らなかった。

 タイタニック号の熱心なファンが作るサイト「エンサイクロペディア・タイタニカ(Encyclopedia Titanica)によれば、ディーンさんは第二次世界大戦中は政府の地図製作者として働き、その後企業に勤めた。
 
 1985年にタイタニック号の残骸が見つかると、ディーンさんは急に世間の注目を浴びるようになり、ドキュメンタリーに出演したり、メディアのインタビューを受けるようになったという。

 映画『タイタニック(Titanic)』のプレミアに招待されたときは辞退したが、1997年にはクイーン・エリザベス2世(Queen Elizabeth IIQE2)号に招待され米国まで渡航し、85年前の旅を終わらせることができた。

 3年前に臀部を骨折し老人ホームに入ったが、費用ねん出のため2008年10月にタイタニック号関連の思い出の品をオークションにかけ、3万1150ポンド(約480万円)を手にした。このオークションをきっかけに、ディーンさんを支援しようという動きが起こった。『タイタニック』に出演したレオナルド・ディカプリオ(Leonardo DiCaprio)とケイト・ウィンスレット(Kate Winslet)、監督のジェームズ・キャメロン(James Cameron)は、合計3万ドル(約290万円)を寄付したという。(c)AFP/Alice Ritchie