【5月31日 AFP】「誰でも記事を編集したり作成できる」ことをうたい文句にしているオンライン百科事典サイト「ウィキペディア(Wikipedia)」米国版が、新興宗教団体サイエントロジー教会(Church of Scientology)に対し、項目の編集を不可能にする措置をとった。

 ウィキペディア上では、同教会の信奉者と批判的な立場のユーザーたちの間で、同教会に関する項目の「編集合戦」が長らく続いていたが、ウィキペディアの仲裁委員会では28日、同教会やその関連団体などが所有または操作するコンピューター・アドレスからのオンライン編集を不可能にする決定を下した。

 仲裁委員会に参加する編集者のひとりによると、このウィキペディア上の論争で最も大きな被害を受けているのは生存している個人の経歴の部分で、編集を加えるユーザーが同教会に支持的か批判的かによって、書き換えのたびに大きく隔たった編集がみられた。

 サイエントロジー教会の広報を担当するKarin Pouw氏は、「一部の編集は非常に悪意に満ちたものだったり、誤解だったりしている」と教会の立場を弁護する。

 ウィキペディア仲裁委員会では、サイエントロジー教会をめぐる編集合戦は、賛否の立場の一歩も引かない見解の押し付け合いで、通常ウィキペディアで求められている中立的な編集方針が揺らいで雰囲気を悪化させ、この論争に付随して編集者同士の対立も招いていると指摘した。「サイエントロジー教会が書き込んだ記事の多くは中立的な見解に欠けており、また教会関係者以外の編集も中傷的だったり、逆に賞賛ばかりだったりと偏っている」という。

 ウィキペディアの悪化につながる例では、サイエントロジー教会のコンピューターからの一斉編集や、逆に教会に批判的な編集者が、自分の著作を参照先として掲載していることなどが挙げられた。また、同教会に関して中立的な書き込みを行う編集者は、賛否両派から攻撃される例が多く、議論に絡んだ主なユーザーが論争から立ち去るまで、編集はとどこおってしまいがちだと指摘した。

 サイエントロジー教会は、トム・クルーズ(Tom Cruise)さんやジョン・トラボルタ(John Travolta)さんなどハリウッド・スターも入信していることで知られている。一方、フランスでは25日、組織的詐欺の罪で同教会フランス支部の幹部6人の公判が開始され、フランス国内では同教会に活動の全面禁止命令が下される可能性も出ている。(c)AFP/Glenn Chapman