【5月12日 AFP】(一部修正)第2次世界大戦中のナチス(Nazi)強制収容所の元看守で、ドイツの裁判所から逮捕状が出ている、米オハイオ(Ohio)州在住のジョン・デムヤンユク(John Demjanjuk)容疑者(89)が11日、ドイツに強制移送された。

 デムヤンユク容疑者は担架に乗せられ、自宅から民間の救急車で運び出された。その際、同容疑者は泣いているように見えた。自宅からの移送は4人の係官によって行われたが、大きなシートが掲げられ周りからは見えないような措置が取られた。

 消息筋によると、同容疑者が乗せられた独ミュンヘン(Munich)行きの飛行機は、クリーブランド(Cleveland)のバーク・レイクフロント空港(Burke Lakefront Airport)から午後7時13分(日本時間12日午前8時13分)に飛び立った。

 デムヤンユク容疑者の家族は同日、コメントは発表しない意向を示した。また、米当局もコメントを避けている。一方、あるドイツ当局者は、デムヤンユク容疑者は12日にドイツに到着する予定だと語った。

 同容疑者の家族はこの数か月、高齢のため長距離の移動は耐えられないと主張し、米裁判所に国外追放の差し止め請求を多数起こしていたが、7日に米最高裁が身柄引き渡しの差し止め請求を棄却していた。

 有力ユダヤ人組織「世界ユダヤ人会議(World Jewish Congress)」は、同容疑者の強制移送を歓迎する姿勢を示した。同会議のロナルド・ローダー(Ronald Lauder)議長は、「米国の司法の手が成功裏かつ正当に、憎むべきナチスの迫害者に対し正義を実行した。米国のユダヤ人社会、特にホロコーストの生存者は、われわれの社会からこの恥ずべき人物が排除されたことを歓迎する」と語った。(c)AFP/Dick Russ