【4月25日 AFP】メキシコのホセ・アンヘル・コルドバ(Jose Angel Cordova)保健相は24日、同国で豚インフルエンザにより20人が死亡し、さらに40人の死因が豚インフルエンザだった可能性があり調査中だと発表した。コルドバ保健相はこれに先立ち、ブタの体内で変異したウイルスがヒトに感染したと述べていた。

 メキシコ当局は豚インフルエンザに感染した恐れがある943人を調査中だとしている。メキシコ政府は人ごみや地下鉄の利用を避けるよう呼びかけ、首都メキシコ市(Mexico City)の学校と博物館を閉鎖した。

 メキシコ政府は50万人分のワクチンを備蓄しており、医療関係者にワクチンを接種する予定。メキシコ市当局は「季節性インフルエンザワクチン未接種のすべての人」に予防接種する方針を示したが、都市部には約2000万人が暮らしており、ワクチンの備蓄量は十分ではない。

 メキシコのフェリペ・カルデロン(Felipe Calderon)大統領は、旅行の予定を取り消し、急きょ閣僚と対応を協議した。

 メキシコ市の国際空港には医療チームが配備され、すべての乗客に問診票への記入を求め、インフルエンザの兆候がある人には旅行を搭乗を取りやめるよう助言している。

■米国でも7例

 米国でもカリフォルニア(California)州で5件、テキサス(Texas)州で2件の豚インフルエンザの人への感染が確認された。

 米国の保健当局者は、米国南部で見つかった7人の感染者のウイルスには複数の型があったことを明らかにし、強い懸念を示している。

 米国の米疾病対策センター(US Centers for Disease Control and PreventionCDC)によると、豚インフルエンザについてはブタ用のワクチンは存在するが、人への感染を予防する専用のワクチンはないという。

 CDCのウェブサイトには「季節性インフルエンザワクチンは、H3N2型豚インフルエンザの予防にはある程度の効果が期待できるが、H1N1型ウイルスへの効果は期待できない」と掲載されている。

■WHO、欧州も警戒

 世界保健機関(World Health OrganizationWHO)は、メキシコで18人が死亡したことを確認し、うち12例が米カリフォルニア(California)州で見つかったインフルエンザウイルスと遺伝子組成が同じだったと発表した。

 患者の大半が過去大きな病気をしていない健康な若い成人だったという。

 WHOは豚インフルエンザがヒトインフルエンザのパンデミック(爆発的流行)のきっかけになるおそれもあるとしており、世界的な疫病オペレーションセンターの活動を開始させた。

 メキシコでのウイルスの型がすべて明らかになったわけではないが、欧州疾病予防管理センター(European Centre for Disease Prevention and ControlECDC)は、「少なくとも2つの例で米国のCDCが確認した新しい A/H1N1型ウイルスは、パンデミックを引き起こしうるタイプのウイルスに発展する恐れがあるかもしれない」としている。

■米国では過去に死者も

 H1N1型豚インフルエンザが人に感染した例は米国で、1976年、1988年、1986年に記録があり、1988年には2人が死亡した。

 近年、パンデミックの懸念は、2003年以降421人が感染し、257人が死亡したH5N1型インフルエンザウイルスに集まっていた。

 ブタが人と鳥のインフルエンザウイルスに同時に感染すれば、ブタの体内でウイルスが変化し、より病原性の強いウイルスが生まれる恐れがある。(c)AFP/Sophie Nicholson