【1月8日 AFP】幼少期に性的虐待、精神的虐待、ニグレクトなど、トラウマとなるような経験をすると、成人になって慢性疲労症候群になるリスクが6倍高くなる。米エモリー大学医学部(Emory University School of Medicine)によるこうした研究結果が、5日の医学誌「Archives of General Psychiatry」に発表された。

 米国の慢性疲労症候群患者は成人の約2.5%にのぼるが、その原因や発症の仕組みについては、ほとんど知られていない。

 同大のクリスティン・ヘイム(Christine Heim)氏によると、ストレス要因にさらされた人全員が慢性疲労症候群になるわけではないため、ストレスによる発症のしやすさを決定づけている因子を特定することが極めて重要だという。

 研究チームは、慢性疲労症候群患者113人と健常者124人を対象に、この因子を探るための調査を行った。

 まず、幼年時代に性的・肉体的・精神的な虐待や二グレクトなど、トラウマとなる経験をしたことがあるかを回答してもらった。次に、うつ病や不安神経症、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の有無と、だ液中のコルチゾールの量を調べた。コルチゾールはホルモンの一種で、これが少ないのは神経内分泌系のストレス反応システムの機能が低下した状態だとされている。

 その結果、特に性的虐待、精神的虐待、感情的ニグレクトを幼年時代に受けた経験は、慢性疲労症候群と密接に結びついていることがわかった。そうしたトラウマは、成人後に慢性疲労症候群になるリスクを6倍高めていることもわかった。

 さらに、うつ病や不安神経症、PTSDの症状は、健常者よりも慢性疲労症候群患者の方に多く見られた。また、コルチゾールの量は、幼年時代にトラウマとなる経験をした慢性疲労症候群患者では少なかったが、経験していない同患者では正常だったという。

 研究チームは、「幼年時代のトラウマが慢性疲労症候群の重要な危険因子であることが、実験で確認された。この病気の予防に新しい方向性を示してくれるものだ」と話している。(c)AFP