【1月7日 AFP】アラブ首長国連邦(UAE)・ドバイ(Dubai)の近年の脅威的な経済成長は数百万人の雇用を創出したが、さらなる繁栄の夢に突然の終止符が打たれた。世界的な金融危機に直面し、各企業はコスト削減のための人員整理を急ピッチで進めているのだ。

 空前の建設ラッシュによる好況に沸いてきたこの湾岸都市は、高賃金・低税率、1年中陽光にあふれた気候という魅力も手伝って、世界各地から人々を集めてきた。だが今や、人口の大半を占める外国人労働者たちの多くは解雇通告を受け、国外に退去するための準備に追われている。

 政府系不動産開発大手、ナキール(Nakheel)は前年11月末に従業員の15%に当たる500人を解雇した。そのうちの1人、アラブ系の元従業員は「給料を減らされてもいいから、働きたかった」と話す。

 解雇通告を受けたのは、解雇からわずか4日前のこと。「あっというまだった」と、別の元従業員は振り返る。

 ナキールは、ドバイ沖の巨大な椰子の木型の人工島「パーム・ジュメイラ(Palm Jumeirah)」プロジェクトを手がけたUAE最大手の開発業者で、前年10月に世界一の高さの「ブルジュ・ドバイ(Burj Dubai)」を優に抜く高さ1000メートルの高層ビルの建設計画を発表したばかりだった。

 ドバイでは過去数年間、不動産が飛ぶように売れたが、世界的な信用収縮で投資家や債権者がドバイの市場から逃げるように姿を消していくなかで、需要は急激に落ち込んだ。壮大な建設プロジェクトの可否についても、当然疑問が投げかけられることになった。

 民間不動産開発最大手のダマック(Damac)グループは前年10月、従業員の2.5%にあたる200人を解雇した。同社の会長は先ごろ、「当社は年100%の成長率を遂げてきたが、状況は変わった。さらなる人員削減の必要に迫られるかもしれない」と発言した。

 建設大手のAl-Shafar General Contracting社は今月初め、前年9月以来の受注額が30億ディルハム(約760億円)落ち込んだこともあり、1000人の人員削減を進めていると発表した。

「ブルジュ・ドバイ」建設を手がけた不動産開発大手エマール(Emaar)は、前月に100人を解雇したと伝えられている。

 人員整理の波は、金融部門にも及んでいる。例えばShuaa Capital投資銀行は、行員の9%にあたる21人を解雇した。

■外国人労働者とローン

 UAEの各都市は、つい最近まで空前の雇用ブームに沸いていた。前週発表された統計によると、今年第一四半期向けに発行された労働許可証(ワークパーミット)は64万件。うちドバイだけで30万6000件にのぼる。

 2007年12月時点のUAEの人口は640万人で、うち550万人が外国人。うち300万人以上が労働省に登録された人々、つまり「外国人労働者」だ。

 ドバイや湾岸諸国の外国人労働者は、解雇を通告された場合、1か月以内に荷物をまとめて国外に退去しなければならない。

 雇用主は、外国人労働者の雇用契約解除について、銀行に報告することになっている。銀行がローンの返済義務がある外国人労働者に対し、国を去る前に完済を要求できるようにするためだ。

■「解雇通知書を見せると食事がタダ」のホテルも

 ナキールは、外国人労働者がドバイの銀行にローンを抱えている場合を考慮し、解雇後も3か月間は給料を払い続ける。外国人労働者は、2月末までドバイに滞在することが可能だ。

 同社と契約した外国人労働者の多くは、自身の蓄えを同社が手がけた不動産に投資してきた。クギを切られた労働者たちは、そうしたお金を回収することもままならなくなっている。

 ドバイのウォーターフロント開発事業の先行きが危うくなっているなか、ピンチをチャンスに変えようとしている企業家もいる。市内のある3つ星ホテルは、解雇通知書を持参すると食事がタダ、というサービスを開始した。実際にこのサービスを利用した客は今のところごくわずかだが、このホテルの知名度は一気に上がったという。(c)AFP/Ali Khalil