【12月26日 AFP】欧州最大の経済国ドイツの首都ベルリン(Berlin)の一角に、食糧の配給をもらおうと、プードル、ドーベルマン、テリア、シープドッグたちが列を作っている。

 ここは、ベルリン初のペットのための食糧配給所だ。動物愛護団体「Tiertafel」が10月中旬、トレプトウ(Treptow)地区の現在は使用されていない夜間学校の校舎に開設した。12人のボランティアスタッフが、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、セキセイインコなど、さまざまなペットに餌を配給し、健康状態のチェックも行う。

 餌の配給をもらえるのは、年金生活者や失業手当の受給者が飼っているペットだ。餌は個人や食品会社からの寄付でまかなわれている。こうしたシステムのおかげで、ペットを養っていく経済的余力がない人でも、愛するペットと引き続き人生を共にすることができるのだ。

 2年前に設立された同団体は、現在国内各地で19の食糧配給所を運営している。第2次世界大戦後最長で最悪となることが予想される経済不況のなか、新たに30か所を開設する計画だ。

 自身も3匹のイヌを飼っている同団体のクラウディア・ホルム(Claudia Hollm)さんは、父親が解雇されたためイヌを捨てざるを得なくなった家族の話をテレビで見て、ペットのための食糧配給所というアイデアを思いついた。「家族の事情はイヌには関係ありません。30-40ユーロ(約3800-5000円)のためにペットを捨てるなんて、あってはならないことです」

■ペットは「唯一の身内」

 トレプトウ地区のペット食糧配給所では、飼い主の登録が義務付けられている。対象のペットは必要な予防接種を受けていなければならず、飼い主は、経済的援助を必要としている証しとして社会保障関連書類、失業認定書、年金カードなどを提示しなければならない。

 このペット食糧配給所への登録者は、これまでに400人近くを数えているという。

 市に登録されているイヌは10万匹で、その大半が年金生活者に飼われている。ホルムさんは、「貧困は、頼るべき相手がペットだけ、という飼い主をペットから引き離す悲劇をも招く。登録に来る飼い主の半数は高齢者で、イヌやネコが唯一の身内、という人たちなのです」(c)AFP/Marion Meyer-Radtke