【12月23日 AFP】(写真追加)世界的な経済危機による景気後退も色濃く、失業が増える中、懐の痛みをいやしたいと願うスペインの市民たちは22日、世界一賞金の多いクリスマス恒例の宝くじ「エル・ゴルド(El Gordo)」の結果を知ろうと、テレビやラジオのまわりにしがみついた。

「太った人」と銘打たれたこの宝くじは、スペインのクリスマスの風物詩。クリスマス休暇を控え、できる限り多くの人たちに「思いがけないお小遣い」をという趣で、スペインに住む人の5人に約4人がこのくじを買う熱狂ぶりだ。

■今年の売り文句は「不況」

 今年の売り上げは、前年より2.79%少ない総額27億8000万ユーロ(約3490億円)だったが、賞金総額は前年よりも1億ユーロ(約126億円)多い23億2000万ユーロ(2910億円)。社会事業資金をまかなうために実施されるほかの公営くじとは異なり、売上金の70%もが賞金として還元される仕組みとなっている。大当たりの本数は限られているが現金20ユーロ(約2510円)相当のチケットから、1等30万ユーロ(約3770万円)まで何百万本もの当たりが用意されている。

 スペインでは10月、欧州連合(EU)加盟国最高の月間失業率12.8%を記録した。10年に及んだ不動産ブームは急激にしぼみ、景気後退の危機にひんする中、「不況」が今年のエル・ゴルドの売り文句となった。

■3時間の当選発表、待ちわびる人びと

 毎年の伝統で、サン・イルデフォンソ(San Ildefonso)学校の生徒たちが、グレゴリオ聖歌に乗せて当選番号を歌い上げる発表式は、3時間に及ぶ。その間、人びとは家の居間で、バルで、会社のオフィスで、テレビの周りをうろつきながら当選結果を待ちわびる。

 スペイン軍勤務のサンドラさん(26)は、今年のエル・ゴルドに100ユーロ(約1万2500円)を費やした。前年は150ユーロ(約1万8800円)使ったが「金融危機のせいで」減らしたという。彼女は同じくスペイン軍兵士の友人、ピラールさん(27)と2人で首都マドリード(Madrid)中心部のバル「レイ・フェルナンド」で、浮かない顔をしながら発表を聞いていた。33ユーロ(約4150円)を投じたというピーラルさんは「くじに勝つには幸運がたくさん必要」と語った。

■家計の2%をギャンブルに

 1等賞金では、世界各地でもっと大金が当たった例があるが、賞金総額ではエル・ゴルドが最高だと、専門家たちは口をそろえる。くじが発売開始されるのは7月。スペイン全国のカフェやバルといった身近なところで売られるくじを同僚、友人、親せき同士で一緒に買う。

 スペインでは家計の2%を宝くじやそのほかのギャンブルに投資するという統計もある。欧州諸国のなかでは最も高い比率だ。

 エル・ゴルドは2005年からインターネットでも販売開始され、現在では国外からの購入者も増えている。(c)AFP