【11月20日 AFP】ローマ法王庁がカトリック信者に「福者」の位を授ける「列福式」が24日、国内で初めて長崎市で行われる。17世紀の江戸時代に殉教したキリスト教信者188人に、最高位である「聖人」に次ぐ福者の位が授けられるが、日本でのキリスト教布教における暗い過去が再び語られる時でもある。

 日本ではキリスト教は深く根付いていないが、カトリック教会では今回の式をきっかけに、キリスト教の歴史に関心を持つ人が増えることを期待している。

 キリスト教は1549年、ポルトガルのイエズス(Jesuit)会宣教師、フランシスコ・ザビエル(Francis Xavier)により日本にもたらされた。しかし幕府はまもなくキリスト教禁止令を出し、信者への迫害を開始。

 幕末に米国の圧力で開国し、明治維新後の1873年、信教の自由が認められるまでの250年間に3万人が殉教したとされる。「世界を歩いた神父」として知られるペトロ岐部(Peter Kibe)も殉教者のひとりだ。

 この間、「隠れキリシタン」たちは辺境の島などに逃れ、マリア像を仏像に似せたり、仏像の背中に十字架を彫るなど、仏教徒と見せかけるための工夫をこらし、キリスト教への信仰を続けた。

 信者への拷問は壮絶だった。はりつけや斬首はよくみられ、耳を切って逆さづりにし、全身の血が抜けるまで放置する方法もあった。雲仙岳の火口に生きたまま放り込まれる者もいた。また信者の家族は、たとえ生後12か月の乳児であっても、一家全員が皆殺しにされた。

■祖先が隠れキリシタン、迫害の歴史への関心高まる

 今回の隠れキリシタンたちの列福は、書類の提出から25年以上を経て前年、現ローマ法王ベネディクト16世(Benedict XVI)が決定した。式は平和を象徴して、1945年8月9日に原爆が投下された長崎平和公園で行われる。法王庁の前列聖省長官ホセ・サライバ・マルチンス(Jose Saraiva Martins)枢機卿が出席するが、政府関係者は、カトリック教徒である麻生太郎(Taro Aso)首相さえも招待されていない。

 キリシタンの迫害についてはある程度は知られているが、関心は総じて薄いと、歴史家らは口をそろえる。日本におけるキリスト教徒の数は100-200万人、うち約50万人がカトリック教徒と推定される。

 ある地元の女性は、自分の祖先が殉教者だったことを知ったのは、つい最近のことだと言う。「いい意味で衝撃でした。カルチャーショックといってもいいでしょう。わたしみたいに、祖先が隠れキリシタンだったことを全く知らない人は、たくさんいるんじゃないでしょうか」

 そうした言葉を反映するかのように、地元自治体は、キリシタンの歴史に興味を持つ人が最近にわかに増えてきていると言う。観光収入に大きく依存しつつある長崎市は前年、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」をユネスコ(UNESCO)の世界遺産(World Heritage)暫定一覧表に登録した。(c)AFP