【11月18日 AFP】バングラデシュに大型サイクロン「シドル(Sidr)」が直撃してから15日で丸1年となった。同国では、このサイクロンで3500人以上が犠牲となり、壊滅的な被害を受けた地域は1500平方キロメートルにおよんだ。国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)の世界自然遺産にも登録されている南西部シュンドルボン(Sundarbans)のマングローブの森も、木々が根こそぎ倒れるなどの被害を受けたが、最近になって驚異的な回復をみせているという。

 シュンドルボンのマングローブの森は、バングラデシュとインド・西ベンガル(West Bengal)州にまたがり、ガンジス川(Ganges)とブラマプトラ(Brahmaputra)川のデルタ地帯に位置する。緑豊かな陸地の間を数多くの河川が複雑に流れる泥地帯で、総面積は1万平方キロメートルにおよぶ。

 基本的には無人地域だが、周辺の貧困地域の村々に暮らす住民には、漁業や、蜂蜜や木材を採取するなど、生活の糧を得る場となっている。絶滅危ぐ種に指定されているベンガルトラの生息地としても知られている。

 サイクロンでは数十万本もの木々が根こそぎとなったが、同国の森林当局によると、最近になってマングローブの森に緑が戻り、動物たちの姿がみられるなど、驚異的な回復力を見せている。サイクロン後、政府が森への立ち入りを禁止し、そのままの状態に放置したことが功を奏したようだ。

 当初、森林当局は、サイクロンで倒れた木々を取り除いたり、種を植えたりするなどの、マングローブの森の再生計画を検討していた。しかし、専門家から森の自然回復を待つのが最善策との指摘を受け、計画を撤回。森への立ち入りを一切禁止した。その結果、同国政府の森林研究機関の関係者が数か月前に森を訪れた時には、数十万本の倒木から新芽が芽吹いていたという。

 この成果を「驚異的だ」と語る同関係者は、マングローブの森は目覚ましい速度で回復しており、2-3年以内にサイクロン以前の姿を取り戻せるとみている。(c)AFP