【11月4日 AFP】米国で一般的に使用されている殺虫剤により極小の吸虫が増殖、カエルに寄生して免疫防御システムを破壊し死に至らしめているとする研究結果が、30日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表された。
 
 南フロリダ大学(University of South Florida)の研究チームは、スイスの農業バイオ大手、シンジェンタ(Syngenta)製の除草剤に含まれる有効成分アトラジンがカエルに及ぼす影響を調査した。アトラジンは、欧州連合(EU)域内では2004年に飲料水で検出されたことを機に使用が禁止されているが、米国では過去15年間、特にトウモロコシ栽培地域において除草剤の主要成分として積極的に使われている。

 チームは、ミネソタ州(Minnesota)の18か所の湿地帯でカエル240種以上を対象に調べた結果、アトラジンの濃度と吸虫の寄生率には相関性があり、カエルの病気の50%以上がアトラジンと関係があることがわかった。さらに、近くの農場で使用されたリン酸肥料がアトラジンに混じると、カエルが病気になる確率は最大で75%跳ね上がることもわかった。 

 チームは詳細な調査のため、容量1100リットルの複数のタンクにカタツムリと吸虫の幼虫を置き、葉っぱを敷き詰めるなど自然環境に近い状況を作り出し、4週間生育した。一部のタンクには、湿地帯と同一の水中濃度になるようアトラジンを加え、アトラジンを加えないタンクと比較した。すると、前者ではカタツムリの繁殖速度が4倍速く、カタツムリを宿主とする吸虫の数も爆発的に増えることがわかった。

 また、前者のタンクではアオガエルへの吸虫寄生率が極めて高く、ヒョウカエルの死亡率が高かった。カエルの一部の種は、吸虫の寄生により四肢の奇形や腎臓の損傷がもたらされ、死に至ることもあることが知られている。

 以上のことから、アトラジンは吸虫の増殖を促進し、リン酸肥料が混じるとその影響がさらに促進されると、研究チームは結論付けている。

 一方で、研究を主導したジェイソン・ロフル(Jason Rohr)氏は、1990年代半ばに始まった国内外のカエルの減少は、こうした要因だけでは説明できないと主張している。地球温暖化に伴う湿地帯の生息域の減少も一因に挙げられるが、ロフル氏はほかの化学物質の影響も指摘する。

 米環境保護局(EPA)は2006年、アトラジンは健康被害を何らもたらさないとの見解を示している。(c)AFP