【11月3日 AFP】イタリアとオーストリア国境付近のアルプス(Alps)山脈氷河で1991年に発見された約5300年前の男性ミイラ「エッツィー(Oetzi)」(通称:アイスマン)が、現代ヨーロッパ人の祖先ではない可能性が出てきた。

 イタリアと英国の遺伝子研究学者のチームが、イタリア北部ボルツァーノ(Bolzano)の南チロル考古学博物館(South Tyrol Museum of Archaeology)に保存されている「アイスマン」のミトコンドリアDNA解析を行ったところ、現代ヨーロッパ人と同じK1グループに属するものではあったが、K1グループの中の3種の遺伝系統のどれとも共通ではなかった。

 このことから、研究チームのマーティン・リチャーズ(Martin Richards)英リーズ大学(University of Leeds)教授は、「アイスマン」は現代ヨーロッパ人にはない未発見のK1系統樹に属する人種である可能性が高いと分析した。

 アルプス凍土のおかげで、「アイスマン」は発見時、驚くほど良好な状態で保存されていた。死亡時の推定年齢は46歳で、弓矢で射られ重傷を負った上に、頭部を凶器で殴られ死亡したとみられている。合わせて衣服や武器なども発見され、新石器時代後期の人びとの暮らしを知る手掛かりとなっている。

 英リーズ大と伊カメリーノ大学(University of Camerino)の合同研究チームによる「アイスマン」のDNA解析結果は、科学誌『カレント・バイオロジー(Current Biology)』の最新号に掲載されている。(c)AFP