【11月3日 AFP】いよいよ佳境に入った米大統領選では、初のアフリカ系大統領を目指す民主党候補バラク・オバマ(Barack Obama)上院議員の夫人、ミシェル・オバマ(Michelle Obama)さんにも注目が集まる。

■自身がアメリカンドリームを体現

 自分の夢は米国だからこそ実現したと語るミシェル夫人(旧姓:ラヴォーン・ロビンソン、LaVaughn Robinson)は、黒人の間で公民権運動が最も高揚しようとしていた1964年の1月17日、シカゴ(Chicago)の労働者階級の家庭に生まれた。

 裕福ではない家庭環境ながら、ミシェル夫人は米国でも最高レベルのプリンストン大学(Princeton University)に入学。続いてハーバード大学法科大学院(Harvard Law School)に進んだ。専門は会社法で、シカゴの貧困地区で活動する非営利団体「パブリック・アライズ(Public Allies)」の所長を務め、現在はシカゴ大学病院にも籍を置く。

 2日後に控えた米大統領選で、夫のオバマ氏が当選すれば、ミシェル夫人の経歴に「米国史上初のアフリカ系ファーストレディ」との肩書きが加わることとなる。

 ミシェル夫人は長期にわたる選挙戦の当初から夫の傍らに寄り添い、流ちょうなスピーチで聴衆を印象づけながら、庶民性をアピールしてきた。彼女の役目は夫を当選させることだけではない。彼女自身と家族を通じて、家庭のイメージを米国民に浸透させることも選挙戦の狙いの1つだからだ。

 さきごろNBCテレビの『トゥナイトショー(Tonight Show)』に出演したミシェル夫人は、「全米各地を回り、普通の米国市民がいかに堅実な暮らしをしているかを学んだ」と話した。また、ショーのホスト、ジェイ・レノ(Jay Leno)氏に、米国の経済悪化が一般家庭にもたらす影響への懸念を語り、庶民の味方であることを印象づけた。

「彼女(ミシェル夫人)自身が、アメリカンドリームを体現していた」と語るのは、90年代にNPO「パブリック・アライズ」でミシェル夫人の下で働いた経験を持つメキシコ系米国人のホセ・リコ(Jose Rico)氏だ。「われわれと同じ労働者階級の出身でも、学問でも実務の世界でもスキルを得て学び、成功できる、そして自分のコミュニティに貢献さえできると、わたしに初めて示してくれたのは彼女だ」

■最も大切にしているのは母親の役割

 一方、ミシェル夫人は選挙戦の最中、夫オバマ氏に対する支持を見て「大人になってから初めて米国を誇らしく感じた」と発言し、「愛国心がない」と批判されもした。

 こうした攻撃をかわすため、ミシェル夫人は、発言の論調を抑制しているようだ。最近は世論調査結果もテレビも見ていないという。

 ミシェル夫人が公の場に登場する回数が減った理由の1つは、「彼女には2人の娘の母親という役割があるからだ」と、ワシントンD.C.(Washington D.C.)にあるアメリカン大学(American University)のレナード・スタインホーン(Leonard Steinhorn)教授(政治コミュニケーション学)は指摘する。

 オバマ夫妻には、10歳になるマリア(Malia Obama)ちゃんと7歳のサーシャ(Sasha Obama)ちゃんがいる。前週、ハワイ(Hawai)の祖母を見舞ったオバマ氏の代役を務めたオハイオ(Ohio)州での選挙集会で、夫人は「朝、目覚めて最初に思い浮かぶのも、夜、1日の最後に思い浮かべるのも娘たちのこと」と語った。またオバマ氏自身も選挙運動中、夫人にとって一番重要なことは娘たちの母親であることだと語っている。

 オバマ氏が米大統領に当選を果たし、ミシェル夫人が大統領夫人となった場合、夫人はファーストレディとしての役割と家庭を大事にする母親の双方のイメージのバランスを保とうと考えるだろうと、スタインホーン教授は予測する。

 リコ氏も断言する。ミシェル夫人は「間違いなく米史上、最高のファーストマム(大統領ママ)になる」(c)AFP