【10月30日 AFP】深刻な景気後退のなか、人口19万3000人、目立つ産業のない島根県松江市が「宍道湖の夕日」という新しい観光資源を開拓した。

 ギリシャ生まれの作家、ラフカディオ・ハーン(Lafcadio Hearn、小泉八雲)は、19世紀後半に松江に住んでいたころ、宍道湖に沈む夕日をこよなく愛していたと伝えられる。だが、松江の夕日はつい最近まで、海外はおろか国内でも、ほとんど知られる存在でなかった。

■「夕日プロジェクト」で海外への宣伝効果アップ

 同市で唯一、活気のある観光業で「美しい夕日を最大限に活用したい」という市職員らの思いが、2007年8月に、「夕日プロジェクト」の立ち上げというかたちで結実した。これが功を奏し、2007年の外国人観光客は前年比41.5%増の3万4898人だった。なかでも、松江観光公式サイトに「週間夕日指数」を掲載して以降の増加が目立った。

 週間夕日指数は、宍道湖の夕日が見られる度合いを指数として表したもの。この種の予報ではおそらく世界初で、1か月に約7000回のアクセスがあるという。データは気象庁の予報に基づいているが、指数の判定は市の担当職員が行う。

「夕日は晴れの日よりも、雨あがりや曇っている時の方が美しい場合がある」点も考慮に入れられている。市は、絶景ポイントに歩道やテラスを備えた「宍道湖夕日スポット」も整備した。

■11月には「夕日サミット」も開催
 
 夕日指数の高いある日、この夕日スポットに数十人が集まっていた。研修旅行で名古屋から来たという看護師(25)は、「松江がこんなに素晴らしい所だったなんて、これまで知らなかった。いつかまた訪れたい」と話した。同僚(24)は「とても気持ちがいい。このあたりには癒しのパワーがある」とうなづいた。

 松江市は、宍道湖の景観を維持する努力を怠らない。2004年、湖畔の山間部に風力発電所を建設する計画が持ち上がったが、同市は計画を白紙撤回させた。また、湖畔に14階建てコンドミニアムを建設する計画も却下した。
 
 市では11月初め、日本各地の夕日の名勝地から関係者が集う「夕日サミット」を開催する。1週間の会期中はコンサートや、夕日について考えるシンポジウムなど、様々なイベントが開催され、「夕日の有効活用」について話し合われるという。(c)AFP/Kyoko Hasegawa

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