【10月19日 AFP】ほぼ全身が不随となった英国人の元ラグビー選手が、スイスの医療機関で専門医の立ち会いのもと自殺した。男性の両親は17日、自殺した息子の決心を代弁・擁護する書簡をメディアに送った。

 ダニエル・ジェームズ(Daniel James)さん(23)は、9月12日に死亡した。幇助(ほうじょ)自殺を選択した英国人男性としてはおそらく最年少だとみられている。

 かつて英国アンダー16・ラグビーチームのメンバーにも抜てきされたダニエルさんは昨年3月、プレー中に崩れたスクラムの下敷きになり脊椎を損傷、首から下が不随となった。

 英国中部ウースター(Worcester)に住む両親マーク・ジェームズ(Mark James)さんとジュリー(Julie James)さんは書簡で、息子はこの重度の身体的障害を受け入れることができず、動かなくなった身体を「牢獄」だと考え、くり返し死にたいと話していたと述べた。

 両親によると、息子ダニエルさんは「健全な精神を持った知性のある青年だった」とし、「彼は、自分が二流と感じる生き方を歩む準備はできていなかった」という。ダニエルさんはまた、「念願をかなえる前に」数回自殺を試みていたという。

 書簡には、「ダニエルの死は家族、友人、そして彼に心を掛けたすべての人びとにとって悲しい出来事となったが、ダニエルが自ら命を絶った結果、『牢獄』と感じた身体と毎日繰り返される生への恐怖や嫌悪から解放されたことは前向きに受け止めたい。家族はダニエルがこのような方法で最期を迎えることは決して望まなかった。彼を知る人びとが感じたように、ダニエルは知性があり、意志が強く、固い決意を持つ青年だった」と両親の心境が述べられていた。

 報道によると、捜査当局はマーク・ジェームズさんとジュリーさんの立件を視野に捜査を開始したという。

 英国では自殺の幇助は違法に当たるが、スイスでは容認されている。

 ダニエルさんが自殺を決行したとされるスイス北東チューリヒ(Zurich)のクリニック「ディグニタス(Dignitas)」は、過去にも医師が英国人の自殺を幇助したことで知られるが、個人情報の公開は行っていない。(c)AFP