【9月4日 AFP】男性は母親に容姿が似た女性を生涯のパートナーに選び、女性は父親似の男性に引かれることを科学的に調査した報告が3日、発表された。

 報告によると、異性愛の人たちは、自分の性と逆の性別の親に顔が似た人物に強く引きつけられる。この特性が進化の動因に根ざしている可能性があるという。

 研究を率いたハンガリー国立ペーチ大学(University of Pecs)のTamas Bereczkei氏は、人間の顔を14区分し、あごの広さや、口とまゆの間の距離、その他の部分同士の距離などに基づき、各部の比を表したモデルを作成。このモデルを基準にハンガリーの52家族から、それぞれの家族内の夫婦と、夫婦それぞれの両親の計312人の顔を計測した。

 この結果、研究者たちは、女性の被験者の伴侶と父親、男性の被験者の場合は伴侶と母親の顔が似ているという極めて明らかな相関関係があることを発見した。被験者は無作為に選ばれた人たちで、審査団を設けて調査を繰り返しても同じ結果が出た。

■男性と女性では注目する部分に違い

 興味深いことに、引かれた相手の顔について男性と女性では異なる部分に注目することが分かった。男性では唇の厚みと口の横幅、あごの縦横の長さが母親と似た女性に魅力を感じていた。一方、女性にとって重要なポイントは、口からまゆまでの距離、顔の長さ、両目の間の距離、鼻の大きさが父親と似ているかどうかだという結果だった。

 Bereczkei氏は、こうした選択は心理的な原因や社会的な環境によるものというよりも、進化的圧力によるものではないかとみている。

 昆虫のように遺伝子的な交配が過剰になると、進化的には不利になる。しかし、遺伝的に似ている性質を探すのであれば、逆に「付加的な有利性が授けられる可能性がある」という。また、親と容姿が似ている人を伴侶とすることで、そのカップルが持つ互いに似た遺伝性質がさらに子どもに受け継がれる度合いが高まり、子孫における遺伝的発現が強化されるとも考えうる。

 さらに似た性質を持つ者同士で伴侶を見つけることで、特定の環境に適応するよう進化した遺伝的複雑性を保持することができるだろうともいう。

 しかし、遺伝的必然性よりももっと「幸福」なボーナスがあるかもしれない。「身体的、心理的に似た特徴を持つ者同士のカップルは、似ていない者同士のカップルよりも関係が持続する傾向があるとみられ、結果的に繁殖力が高まるといえるかもしれない」と報告は結論づけている。

 この研究報告は「英国王立協会紀要(生命科学版、Proceedings of The Royal Society B)」に発表されている。(c)AFP