【8月8日 AFP】五輪の伝説カール・ルイス(Carl Lewis)氏が7日、北京でAFPのインタビューに応え、競技に参加するアスリート達は薬物に汚された陸上というスポーツとの戦いにおいて、責任を負わなければならないと語った。

 この一年間でマリオン・ジョーンズ(Marion Jones)や2000年のシドニー五輪の米国男子4×400メートルリレーチームが、薬物の陽性反応の為に獲得したメダルを剥奪されている。短距離と走り幅跳びのスペシャリストであるルイス氏は、変化の重要性は各個人から来るべきものだとした。

 北京五輪に向けてルイス氏は「陸上選手たちは一歩踏み出して、自分たちの競技の中の薬物問題を終わらせたいという決意をすることが必要だ。彼らがそうするまでは問題となるだろう。もし陸上選手たちがそれ(ドーピング)を望まないのであれば、終わらせることが出来なくてもその多くを解消することは出来る。例えば、リレーチームに入れば、選手は誰が汚れているかが分かる。5年でメダルを失うようなリレーチームで何故走ろうとするんだ?選手の発言次第になってくる、『私は走らない。君が何をしているか知っている。どうなるか分かる。君がチームにいるなら走らない』とね。『これで終わり』と選手たちが発言しても大丈夫だと、もし彼らに伝えれば、そういったことを解消することができて、競争をより公平なものに出来る」と語った。

 五輪で9個の金メダルを含む10個のメダル、世界選手権でも8個の金メダルを含む10個のメダルを獲得し、1979年から96年まで短距離や走り幅跳びで驚異の競技人生を歩んだルイス氏は「自分のスポーツの為に立ち上がるんだ」と促した。そして、「マリオン・ジョーンズとリレーの傍らで、約30個のメダルが返還されることだろう」と米国陸上界が被った忌むべき一年でダメージを受ける副次的な影響がまだあるとルイス氏は考えを示した。

 また、ルイス氏は1988年のソウル五輪米国代表選考会で3つの薬物検査で陽性となった自身のドーピングの経験を率直に語った。当時の国際法では出場停止を受けなければならなかったルイス氏は、激しい非難から逃れることを許された上ソウル五輪出場した100人以上の選手のうちの一人だった。ルイス氏はAFPに対し、興奮剤を植物性の生薬から知らないうちに摂取したとし、「今は医薬品の薬物検査のリストにさえ載らないようなものだった。最初に検査を始めたとき、それ(禁止物質のリスト)に全てが載せられていたというのが真実だ。人体への(とある物質による)影響を見てからそれを調整し始めた。そう、だからもし私が今全く同じものを摂取しても陽性反応はないだろう。運動能力向上剤を摂取したことはないというのが事実だよ。私は20年以上前、1980年代の中ごろに大会外での独立した薬物検査の機関について初めて口にした選手なんだ」と主張した。

 この検査で自身の名声が傷つけられ、自分を中傷する人々の目に映ることになったと認めたルイス氏は「その種の人々にとっては、もちろんそう(名声の汚点)だと思われただろう、どちらにしても嫌がるような人たちだったからね。ただ、私を知り、私の誠実さを知る人々は私を支持してくれた。現実に、もし私が本当に運動能力向上剤を摂取したならば、私が多くの人々に声をかけたことで誰かが発見するだろう。私を信じるんだ。週刊誌のシュテルン(Stern、ドイツの有名雑誌)も調査しようとしていたが、全て順調にいって、和解したことに感謝したい。嫌悪する人一人に対して「私は彼のしたこととその姿勢を信じる」と言う人が1万人はいるだろう」とルイス氏は語っている。(c)AFP/Luke Phillips