【7月10日 AFP】アップル(Apple)の携帯電話端末「iPhone」の最新モデルが、週内に同シリーズとして初めてアジアで発売されるが、アジア圏の消費者は思いのほか冷静なようだ。

 香港でビジュアル・アーツを学ぶ22歳のマンシー・リー(Mancy Li)さんは「タッチ・スクリーンで見た目も可愛いく、アップル製。トレンディなので1台欲しい」が、値段がどうなるかしばらく様子を見たいと語る。

 同シリーズの第3世代モデル「iPhone 3G」は11日、東京からシドニー(Sydney)までアジア太平洋地域で一斉発売される。アップルでは、携帯音楽プレーヤー「iPod」に続く世界的ヒットになることを期待し、初代iPhoneと比べ通信速度は2倍に向上、価格は半額と大々的に宣伝している。初代モデル同様iPodも内蔵されているが、最新型「iPhone」は、他地域では直面することのなかった苦戦をアジアでは強いられるとの見方もある。

■アジアのユーザーにアップル効果は絶大のはずだが・・・

 専門家の多くは、テクノロジー通があふれるアジア市場において、アップルのブランド力は絶大だと「iPhone 3G」の好調を予測する。シンガポールに拠点を置く市場調査グループIDCのアナリストも、アップルが「初めてアジアで展開する携帯電話。アップル効果で、アップルユーザーではない人たちもこの製品に注目するだろう」と語る。

 アジア地域ではすでに最新モデルに対する人気は熱狂的だ。しかし闇市場では「iPhone」初代モデルが広く出回り、ソフトウエアのロックを解除する店舗も無数にある。そのため、アジアのユーザーにとって、新規性という意味ではすでにあまり価値はなく、最新機種では値ごろ感がポイントとなってくるのだが、これが障害となる可能性がある。

 アップルでは世界の他地域同様、「iPhone」の販売ルートを一部の通信事業者に限定しており、そうした事業者の料金プランは「格安」とはいえないことが多いからだ。
 
■競合機種が多様な日本では、さらに苦戦

 日本ではさらに、「iPhone」ではできないTV番組の視聴や、クレジットカードのように買い物の支払いが可能な競合モデルに囲まれて、より苦戦を強いられそうだ。

 東海東京調査センター(Tokai Tokyo Research Centre)のアナリストは、他のアジア地域では「iPhone」は旋風を起こすかもしれないが、日本ではそうならないだろうと予測する。日本の携帯電話各機種と比べて、技術的に「iPhone」は優れてはいないという。

 加えて仮に「iPhone」が大成功した場合、ステータス・シンボルとしての特別性が失われてしまうと、消費者の興味もなくなりかねないという声もある。

 前述のIDCのアナリストは、アップルは大きなインパクトを与えたがっているが、一方で希少性や特権的なイメージが消えてしまうほどのインパクトを及ぼしたいとは思っていないと指摘する。
 
 先の香港のリーさんも、皆が持つようになったら魅力がなくなってしまうと言う。「あまり多くの人が使っているのを見たら、買わないと思う。それではもう特別じゃなくなってしまうから」(c)AFP