【6月12日 AFP】王制が廃止されたネパールで、ギャネンドラ(Gyanendra)元国王が11日午後、カトマンズ(Kathmandu)のナラヤンヒティ(Narayanhity)王宮を退去した。国王は今後、カトマンズ郊外にある狩猟用の別荘で一市民として暮らす。

 数百人の機動隊が正門で警備に当たるなか、ギャネンドラ元国王と夫人のコマル(Komal)元王妃は車の後部座席に乗り王宮を後にした。元国王は表情を変えることなく、別荘に向かった。元国王は新居が見つかるまで別荘に滞在する。

 見物に集まった約500人からは「共和国よ永遠に」などの声が上がる一方、王制支持派とみられる少数の人々は涙を流した。

 王宮退去に先立ちギャネンドラ元国王はテレビで国民に対し演説を行った。元国王による所感表明は前月28日に共和制が宣言されて以来初めて。

 2頭のトラのはく製とサイの頭が飾られた前でギャネンドラ元国王は「国民の判断を尊重する」と述べ、「国を離れ」亡命することはないと明言した。

 14分にわたる演説のなかでギャネンドラ元国王は、王宮で起きた殺人事件に関与したとの疑惑および海外に資産を所有しているとの疑惑を否定した。

 ギャネンドラ元国王はダイアモンド、ルビー、エメラルドで飾られた王冠と笏(しゃく)についても「政府に譲渡した」と述べた。王宮は博物館にされる予定。

 在位中、民主化運動の活動家らを厳しく弾圧したとされるギャネンドラ元国王は、「傷ついた人がいたとしたら、それは意図的ではなかったことを理解してほしい」と述べ、亡くなった人々への謝罪は口にすることはなかった。(c)AFP/Sam Taylor