【6月7日 AFP】フランスの司法当局が同国の情報機関「外治安総局」(DGSE)本部を捜索していたことが7日、明らかになった。ジャック・シラク(Jacques Chirac)前フランス大統領が日本の銀行に持っていたとされる口座の調査のため。

 DGSEに近い筋によれば、複数の予審判事が4日、DGSEを訪れ、文書の提出を求めた。DGSEは文書を提出したが、現在封印された状態でDGSEに置かれている。これらの文書は後日、秘密指定が解除される可能性もあるという。

 2006年、フランスの週刊誌が、シラク氏が東京相和銀行(Tokyo Sowa Bank)(現・東京スター銀行)に持っている口座に、ある「文化財団」が1990年代から数年にわたり4500万ユーロ(約74億円)を集めたという記事を掲載した。シラク氏の事務所はこの疑惑を、大統領就任後に始まった個人攻撃の一部だとして繰り返し否定していた。

 これとは別にシラク氏のパリ(Paris)の弁護士の事務所も、1997年にフランス領ポリネシアのタヒチ(Tahiti)のジャーナリスト、ジャンパスカル・クーロー(Jean-Pascal Couraud)氏が謎の失踪を遂げた事件について予審判事の捜索を受けた。クーロー氏はシラク氏が日本に持つ銀行口座の資金の動きを調べていた。

 2002年、タヒチのパペーテ(Papeete)の裁判所は、クーロー氏は自殺したと結論づけ、失踪と銀行口座の調査の関連を認めなかった。しかし新しい目撃者が現れたため、2004年に審問が再開された。クーロー氏の家族は同氏が殺害されたとして訴えを起こしている。クーロー氏の遺体は見つかっていない。

 弁護士のジャン・ヴェイル(Jean Veil)氏によれば、予審判事と検察官の2人が、シラク氏が東京相和銀行に口座を持っていないことを証明する同行からの手紙を押収したという。この手紙は封印された状態で、捜査が行われているパペーテに送られた。

 2007年、シラク氏はパリ市長時代の汚職事件で捜査を受けた。シラク氏がパリ市長を務めていた当時、パリ市役所の職員のポストが不当に水増しされ、その給与が、シラク氏が総裁を務める政党・共和国連合(RPR)に流れたとされるもの。フランスの大統領経験者が司法の捜査を受け、刑事罰を受ける可能性が出たのはこれが初めてだった。

 シラク氏は1977年から1995年までパリ市長を務め、その後12年間フランス大統領の地位にあった。(c)AFP