【6月2日 AFP】娘を着替えさせて学校に送り出し、ペットのネコや魚に餌をやった後、午前7時15分に気を引き締めて業務を開始――ただし仕事場は自宅のキッチン。これが、米コンピューター大手IBMのソフトウェア・マーケティング・マネジャー、ジョアン・セン(Joanne Senn)さん(46)の典型的な1日だ。
 
 センさんの業務の実に95%が、テキサス(Texas)州オースティン(Austin)の自宅で行われている。Eメールをチェックし、全米やヨーロッパの同僚との電話会議に参加し、インスタント・メッセージで意見を交換する。

 センさんはこれまで、IBMオースティン支社まで25キロの距離を毎日、自家用車で通勤していた。今は「通勤から解放されて、驚くほど新鮮な気分」と語り、「オフィス勤務よりも集中できる」と在宅勤務を歓迎する。

 IBMはこうした在宅勤務制度を1992年から導入しており、現在は世界で38万6000人、全社員の約40%近くがオフィス以外で勤務している。同社によれば、勤務形態の選択肢を増やすことで、業績は伸びたという。

■コスト削減策として注目される在宅勤務

 ガソリン価格が最高値を更新し続ける中、通勤費用を抑制したい社員のため、在宅勤務の導入に注目する米企業は増加傾向にある。米人材マネジメント協会(Society for Human Resource Management)の2007年度調査によると、全米で約48%の企業が、従業員に週1日以上の在宅勤務の選択権を与えている。

 このほか、企業が取り入れている原油高騰対策は、週4日勤務、相乗り通勤の奨励、交通費の一部助成などがあるという。

 米テクノロジー業界団体「AeA(旧米国電子協会、American Electronics Association)」調査部門のMatthew Kazmierczak氏は、エネルギー価格の高騰に伴い、今後は企業にとっても在宅勤務の利点がより増すだろうと予測する。

 06年にメリーランド大学(University of Maryland)と米リサーチ会社Rockbridge Associatesが共同で行った調査では、米国内の労働者人口中、フルタイムの在宅勤務者は2%、パートタイムの在宅勤務者は9%にすぎない一方、25%が在宅勤務の可能な職場に勤務していることも判明している。この調査によれば、希望者全員が在宅勤務の形態を取った場合、39億ドル(約4100億円)のコスト削減につながるとの試算が出ている。(c)AFP/Rob Lever