【5月27日 AFP】国際的な食糧不足の緩和策の一環として、日本の備蓄米の海外放出に世界の指導者らが注目している。

 米政府は現在、1993年のウルグアイ・ラウンドでの日米2国間貿易協定で日本に輸入が義務付けられた「ミニマムアクセス(最低輸入量)」枠のコメについて、国内消費に限定した条件を緩和し、国際市場への売却を容認する方向で検討している。

 日本政府はすでにフィリピンへの援助としてコメ20万トンの輸出を用意しているが、これは備蓄されている輸入義務米150万トンのほんの一部に過ぎない。

 東京大学(Tokyo University)農学国際専攻の鈴木宣弘(Nobuhiro Suzuki)教授は、日本にある大量の備蓄米を緊急援助として輸出すれば、世界の貧困層の命を救うことができると強調する。

 日本の主食であるコメは第2次大戦後は不足したが、農業技術の進歩によって世界生産が増えるにつれ、日本政府は国内の農業保護のために輸入障壁を設けるようになった。しかし、米国など主要貿易国の圧力により政府は93年、最低量のコメ輸入を譲歩し、現在は年間約77万トンを輸入している。

 ただし、備蓄されているこれらの輸入義務米を国外に売却するためには、日本は輸出国の承認を必要とする。

■フィリピンへ20万トンの緊急援助

 農水省の白須敏朗(Toshirou Shirasu)事務次官は前週の会見で、フィリピン政府からのコメ支援要請に、日本政府は可能な限り早急に答える用意があると語った。

 政府は23日にも、フィリピン以外にも食糧が不足しているアフリカなどの発展途上国に備蓄米から2万トンを送る計画を発表している。フィリピン政府は前週、日本の緊急支援に対する期待と、2008年の世界コメ生産の豊作予測を受け、コメ価格の高騰が和らいだと発表した。

 フィリピンは世界で一、二を争うコメ輸入国。国際的に穀物価格が急騰する中、08年の国内コメ生産に270万トンの不足が見込まれたことから、今回の緊急要請に至った。
 
 しかし観測筋は、日本の思い切った備蓄米放出がない限り、フィリピンのコメ不足は解消されないだろうとみる。大和総研(Daiwa Institute of Research)のアナリストは「10万トンや20万トンの放出では効果は限定的」と厳しい見方だ。このアナリストによると、フィリピンにはパキスタンその他の国からの輸入米のほかに、日本から60万トンの輸入が必要だという。(c)AFP/Shingo Ito