【4月14日 AFP】チベット(Tibet)問題や人権問題をめぐって北京五輪の政治問題化が色濃くなるなか、1968年のメキシコ五輪で公民権運動を支持する示威行動「ブラックパワー・サリュート(Black Power salute)」を行った米国の黒人元五輪代表選手が、五輪での政治的活動の代償は大きいと述べ、現役選手らに向けて警鐘を鳴らした。英紙タイムズ(Times)が13日、インタビューを掲載した。

■黒人差別に抗議して追放、五輪後は職に就けず

 トミー・スミス(Tommie Smith)氏とジョン・カルロス(John Carlos)氏は、メキシコ五輪の200メートル走でそれぞれ優勝および3位となったが、表彰式で黒い手袋をはめた拳を掲げ、黒人差別に抗議するパフォーマンスを行ったため、国際五輪委員会(International Olympic CommitteeIOC)の処分を受け、米ナショナルチームから除名・追放された。

 2人の行為は五輪史上で最も有名な政治的パフォーマンスとして記憶されることとなる一方、「一夜にして悪者扱いされ、帰国後は職に就くことができなかった」(スミス氏)という。

■北京ではさらに厳しい処分の可能性も

 カルロス氏は、40年が経過しても五輪における状況の変化はほとんど見られないと指摘。北京五輪で政治的な抗議を示すことを考えている選手らに対し、「状況を念入りに調べたうえで、確固たる意志と精神をもってメディアに訴えるなど、われわれとは異なる手段を選ぶ」よう勧めた。

 一方、五輪そのもののボイコットは支持しないが、仏大統領や独首相が開会式の欠席を表明したことについては賛同すると述べた。

 スミス氏は、メキシコ五輪と北京五輪の状況には類似点が多いとして、抗議行為を行った選手をIOCが厳罰に処す可能性を示唆。「抗議活動を止めろとは言わないが、伴う代償が大きいことは指摘しておきたい。IOCが科す制裁は、おそらくメキシコ五輪当時より厳しいものとなるだろう」と述べた。

■史上最も政治色濃い五輪、IOCの責任は

 スミス氏はまた、北京五輪を「五輪史上で最も政治色の強い五輪」と表現。「なぜIOCは、中国のような一党体制国家での五輪開催を認めたのか。金銭がらみではないとの言い逃れはできない。IOCには(安全な五輪遂行の)責任があり、開催地決定に際しても熟考が求められているはずだ」と語った。(c)AFP