【4月11日 AFP】シンガポールの研究チームが9日発表した「肺のないカエル(学名:Barbourula kalimantanensis)」の発見は、進化論に新たな光を投げかけそうだ。

「肺のないカエル」は2007年8月、インドネシア・カリマンタン島(Kalimantan、ボルネオ島)で発見された。研究チームを率いるシンガポール国立大学(National University of Singapore)のデービッド・ビックフォード(David Bickford)氏はAFPのインタビューに応じ、解剖の結果、完全な皮膚呼吸をしていることがわかったと語った。

 多くのカエルは肺呼吸と同時に皮膚呼吸も行っているが、進化により肺を持たなくなったカエルはBarbourula kalimantanensis以外に存在しない。

 つまりこのカエルは、「肺ができ、水生生物から陸生生物へと進化する」という生物の進化プロセスと完全に逆行していると考えられる。

 Barbourula kalimantanensisは、カリマンタン島の熱帯雨林を流れる「冷水川の急流」に生息する。数百万年をかけて肺のないカエルへと「進化」し、そうした特性を持った生息地に順応していったとみられる。水温が低いほど水に溶ける酸素が増えるため、皮膚呼吸に適しているという。

 同じ両生類では、サンショウウオの1種と、ミミズに似た無足目の生物「アシナシイモリ(caecilian)」が進化により肺を失ったとされる。

 ビックフォード氏によればBarbourula kalimantanensisは「クッキーのように平べったく、水中から取り上げてすぐ、それまで見たことのない生物だとわかった」そうだ。

「一見すると醜いのに、すごくかわいいんです。ブルドッグをかわいいと思うのと同じですよ」(ビックフォード氏)

 生物の多くは不要な器官を備えている。たとえばヒトの虫垂がそうだ。生物の進化の基本は「壊れない限りいじるな」という考えにある。たとえ不要な器官でも、不都合が生じない限りなくならないのだ。

 Barbourula kalimantanensisの場合、急流に生息するには浮揚性を低くする必要があったとみられる。肺は浮揚性を高め、ひいては急流で流される危険性を高めることになる。かといって陸上や流れのない「よどみ」で生息することはできない。急流に順応するために、肺を失い、皮膚呼吸に頼るようになったと考えられる。

 研究チームの1人でインドネシア出身の科学者ジョコ・イスカンダル(Djoko Iskandar)氏は、30年前に「肺のないカエル」の存在を耳にして以来、調査活動をつづけてきた。

 だがカリマンタン島に調査に訪れるたび、カエルたちの生息環境が産業による環境破壊にさらされるのを目の当たりにしたという。特に金採掘による河川汚染は、カエルの呼吸を困難にするものだった。

 環境保護団体WWFによれば、カリマンタン島ではこれまで、昆虫・哺乳(ほにゅう)動物・植物を含め数百種の新種生物が発見されている。平均するとほぼ毎月1種の発見ベースだ。

 直近では、毒を持った「トゲガエル」や、陸上を短距離だが移動できる「歩行性ナマズ」、からだが透けている「ガラスナマズ」といった珍種が発見されている。(c)AFP/Aubrey Belford